社会的知識によって顔認知が変化する
Nature Neuroscience
2016年5月3日
ヒトのステレオタイプのバイアスに関する研究で、人種と性別と情動の脳内神経表現の間に結びつきが生じることが明らかになり、個々人におけるこうした広範な社会的カテゴリーの個人的な結びつきが、顔の社会的認知と脳内での顔の処理に影響を与える可能性のあることが示唆されている。この研究結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
性別、人種、情動といった独特な社会的カテゴリーが、概念的知識またはステレオタイプの結果として、頭の中で相互に結びつき、あるいは絡み合うことが、コンピューターによるモデル化によって示唆されている。また、こうした性別と人種と情動形質のステレオタイプによる結びつきが他人に関する知覚判断に影響を及ぼすことが行動研究によって示唆されているが、この結びつきに関与する脳領域は特定されていない。
今回、Ryan StolierとJonathan Freemanは、顔と社会的カテゴリーの処理に関係する2つの脳領域(紡錘状回と眼窩前頭皮質)が顔の認知に対する社会的カテゴリーの影響に介在しているかどうかを調べた。この研究では、2つの機能的磁気共鳴画像(fMRI)研究が行われ、これに参加した合計43人の健康な若年成人が、コンピューターが生成した性別(男性、女性)、人種(黒人、白人、アジア系)、情動(怒り、幸福感)の異なる顔を受動的に見るようにし、その際の参加者の脳の活動が測定された。また、fMRIスキャナーの外で、参加者は、性別と情動と人種との関連に基づいて顔と形質(例えば、知能、攻撃性)を分類した。StolierとFreemanは、個々人の形質の分類(個人的なステレオタイプやバイアスが反映されている)が、人種+情動、人種+性別、性別+情動の観点からの分類の仕方に関連していることを見いだした。そして、このような顔の分類は、特に紡錘状回と眼窩前頭皮質における性別と情動、人種と性別、人種と情動の神経表現の類似性に関連していた。こうした社会的カテゴリーの間の行動的結びつきと神経的結びつきの原因は、顔の視覚的特徴の類似性ではなかった。
doi:10.1038/nn.4296
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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