Research Press Release

アデノウイルス受容体の同定

Nature Medicine

2010年12月13日

アデノウイルスがヒトの細胞に感染する仕組みの理解に役立つ、細胞のアデノウイルス受容体が2つの研究グループによって同定された。この解明は、さまざまなヒトの病気の効果的な治療法や治療薬の開発に極めて重要である。

N Arnbergたちは、アデノウイルス37型(Ad37)の受容体を同定した。このウイルスは目の病気の一種、流行性角結膜炎の主な原因となるウイルスだが、これに対しては、認可された抗ウイルス療法がまだない。受容体はグリカン、すなわち複雑な糖分子で、多くの糖タンパク質に存在する。この発見は、角膜細胞へのAd37の感染を阻害して病気の拡大を抑える薬剤の開発の出発点になる。

A Lieberたちは、細胞間の相互作用にかかわるタンパク質デスモグレイン2(DSG-2)が、呼吸器感染を引き起こすアデノウイルスAd3、Ad7、Ad11、Ad14の受容体であることを明らかにした。DSG-2に結合したアデノウイルスが細胞間接着を一時的に開き、この接触部位にある他のタンパク質への接近を可能にする。Lieberたちは、DSG-2に結合したウイルスのこの性質をうまく利用すれば、治療用アデノウイルスの取り込みを改善したり、癌の治療に使われるような治療用抗体が細胞間接着部位にあるタンパク質に接近するのを促したりできる可能性があると考えている。

doi:10.1038/nm.2267

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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