【医学研究】過去数十年間に低下していた英国の認知症罹患率
Nature Communications
2016年4月20日
英国における認知症の罹患率が1990年代から2011年までに20%低下したという推定結果について報告する論文が、今週掲載される。
Carol Brayneたちは、1989~1994年にイングランドとウェールズの3つの代表地域であるケンブリッジシャー、ニューカッスル、ノッティンガムで、65歳以上の7,635人に対して面接を行った。そして、参加者の20%に対して実施された標準化診断評価面接に基づいて、1989~1994年の認知症患者数が推定された。その2年後にBrayneたちは、前回面接した者の76%に対して再度面接を行い、認知症罹患率を直接計算した。さらに、Brayneたちは、認知症罹患率の経時変化を調べるため、別の5,288人に対して2年間に2回の面接を行って、2008~2011年の上記3地域における認知症罹患率の分析を別々に実施し、この3地域における認知症症例の発生率が、初回と2回目の分析の間に約20%低下したという推定結果を明らかにした。その主たる原因は、全ての年齢層の男性における罹患率の低下だった。
こうした結果は、英国における認知症の症例数が、高齢化が進む集団について予測されるほど急速に増えていないことを示唆している。これと似た認知症罹患率の低下は、すでに過去の研究で報告されているが、Brayneたちは、新たな参加者コホートを利用できたため、分析方法を変えずに認知症罹患率の経時変化を調べることができた。今回の研究では、認知症罹患率低下の根本原因は特定されていない。
doi:10.1038/ncomms11398
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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