新しい系統樹では細菌が圧倒的に優勢
Nature Microbiology
2016年4月12日
ほとんど知られていない1000種以上の生物の新しいゲノムデータと公的データベースのゲノムデータに基づいて、飛躍的に拡大した系統樹を作製したとの報告が寄せられている。この研究によって、細菌ドメインの多様性が他の2つのドメイン(古細菌と真核生物)に比べてはるかに大きいことが明らかになり、系統樹で現在は実際より小さく表されている枝や今後の進化解析に重要になりそうな枝が明確になった。
系統樹は、生物学で最も重要な体系化原理の1つだが、膨大な数の枝があり、その全体規模を見積もるのは難しい。従来は系統樹を描くときに、真核生物(ヒトを始めとするあらゆる動物を含むドメイン)の詳しく分類されている既知の系統に焦点が絞られていたが、これまで調べられていなかった環境からのゲノム採集やゲノム塩基配列解読の新しい手法が登場して、生命の多様性に関する我々の理解は現在大きく変化しつつある。
Jill Banfieldたちは、公的データベースに収載されたゲノムと、さまざまな環境から採集して新たに再構築した1,011のゲノムから新しい系統樹を作製した。このゲノム再構築には、その生物の実験室での増殖、培養が可能かどうかにかかわらず行えるゲノム科学手法を利用した。作製に6,000コンピューター時間を超える時間を要したこの最新の系統樹により、各枝内部の多様性の実態が見えてきた。最も多様性の高い枝は、これまで培養例が皆無の“Candidate Phyla Radiation”と呼ばれる細菌群で、現在の多様な生命の大部分を占めることが分かった。著者たちは、この細菌群の多様性は、進化の初期に出現したこと、あるいは進化が速いこと、あるいはその両方によるのではないかと述べている。
doi:10.1038/nmicrobiol.2016.48
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