食中毒病原菌の強毒性株の同定
Nature Genetics
2016年2月2日
重症の食品媒介疾患であるリステリア症の病原菌について調べるため、数千点の菌株の遺伝学的解析が行われた。今回の研究で、リステリア症を引き起こす可能性の高い菌株が同定され、ヒトに感染して病気を引き起こす際に病原菌が用いる因子が初めて明らかになった。この研究成果は、この病原菌の監視効果を高める上で役立つだろう。
リステリア症は、リステリア菌(Listeria monocytogenes)で汚染された食品を摂取することで発症する重い感染症だ。リステリア症は、特に妊婦にとって危険で、流産や新生児の生死に関わることがある。また、高齢者、新生児、免疫不全患者にとっても深刻な問題となりうる。リステリア菌のいずれの菌株も同等の毒性(病原性)を持つというのが規制当局の現時点での見解だ。
今回、M Lecuit、S Brisseたちの研究グループは、臨床検体と食品検体からリステリア菌株6,633点を採取し、この多様なサンプルセットとリステリア症患者の医療データを組み合わせて、食品中のリステリア菌株の中から病原性の非常に高いものを割り出した。また、今回の研究では、免疫系が十分に機能している人々に感染してリステリア症を発症させるリステリア菌株も同定された。この菌株は、免疫系の回避能を備えており、他の菌株よりも高い毒性を持つことを意味する。Lecuitたちはさらに、今回得たサンプルの多様性を代表する菌株104点のゲノムを比較し、強毒性菌株に特異的な遺伝子を同定した。今回新たに同定された遺伝子群LIPI-4は、リステリア菌が中枢神経系に感染する能力に関係している可能性が高い。
doi:10.1038/ng.3501
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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