アルツハイマー病マウスモデルで、がんの治療薬により記憶障害が改善された
Nature Medicine
2016年1月19日
免疫系を活性化するがん治療薬が、アルツハイマー病のマウスモデルで認知能力や記憶障害を向上させ、病状を軽減することが示された。この研究により、免疫チェックポイント遮断が、アルツハイマー病だけでなく、おそらくは他の神経変性疾患でも治療法となる可能性が明らかになった。
免疫細胞中にある免疫チェックポイントは、免疫応答を活性化したり抑制したりできる経路である。PD-1(programmed death-1)遮断薬は、米国食品医薬品局(FDA)から最近認可を受けたがん治療薬で、PD-1免疫チェックポイント経路を遮断する。これによって免疫細胞は活性化し、がん細胞を攻撃するようになる。
今回M Schwartzたちは、毒性のあるアミロイドβ(Aβ)斑の脳での沈着や進行性の記憶障害といったアルツハイマー病の特徴を示すトランスジェニックマウスの小グループにこの遮断薬を投与した。PD-1遮断薬を3日間隔で2回投与する処置(1セッションにあたる)を受けたマウスでは、プラセボ投与あるいは無治療のトランスジェニックマウスのどちらと比べても記憶能力が改善し、脳の病変が減少し、処置を受けた後の1か月間にわたって炎症が抑えられた。また、1か月に1セッションという治療を2か月続けて受けたマウスでは、学習、記憶、病態にさらに顕著な改善が見られた。Schwartzたちは、PD-1の遮断により、保護作用をもつ免疫細胞の脳内への誘導が促進され、それによって毒性のあるAβ斑の除去が進んだのだろうと考えている。
doi:10.1038/nm.4022
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