Research Press Release
ウマのDun(ダン)という毛色が生まれた過程
Nature Genetics
2015年12月22日
ウマの体色パターンの一種であるDun(ダン)の原因となる遺伝的機構が解明された。ダンが野生のウマのカモフラージュにとって重要だった可能性、そして、これと似た機構がシマウマの縞模様の基盤となっている可能性が示唆されている。
ウマのダンという毛色では、薄い色が体のほとんどを占め、濃い色の部分は、背に沿った1本の縞模様といったようにわずかな模様としてしか存在しないのが特徴的で、ウマの祖先種の毛色だったと考えられている。
今回、Leif Andersson、Gregory Barshたちの研究グループは、ダン以外の毛色のウマがTBX3遺伝子の2つの変異のうちのどちらかを持つことを明らかにした。この2つの変異は、皮膚でのTBX3遺伝子の発現量を下げるが、正常な発生にとって重要な他の組織での機能には影響を及ぼさない。ダンのウマでは、TBX3タンパク質が毛根部で非対称的に発現し、色素産生を阻害するため、毛幹の片側だけに色素沈着が起こる。毛が薄い色に見える。また、現生のウマと古代(40,000年以上前)のウマのゲノムを比較し、ダン以外のウマが持つ遺伝子変異の1つが古代のウマにすでに出現しており、家畜化の過程でヒトによって選択されていた可能性が高いことを明らかにした。
doi:10.1038/ng.3475
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature