キルスイッチ‘Deadman’および‘Passcode’は人工細菌を制御し続ける
Nature Chemical Biology
2015年12月8日
遺伝子組換え細菌を環境中に逃がさずにおくための2種類の新しい封じ込め戦略が、今週のオンライン版で発表される。DeadmanとPasscodeと呼ばれるその合成遺伝子回路はカスタマイズ可能で、産業および環境の分野でさまざまな応用法が考えられる。
遺伝子組換え細菌は、河川の有毒物質のモニタリングや作物の量産化など、各種の重要な課題を達成するために利用できる可能性がある。しかし科学者たちは、こうした「実世界」のシナリオで組換え細胞が利用される前に、本来の環境を破壊しかねない細胞が勝手に増殖できないようにしておきたいとも考えている。この種の制御機構は、必要な入力を科学者が行わなくとも細菌が死滅するように意図されることから、一般的に「キルスイッチ」と呼ばれている。
今回の論文では、James Collinsたちが、大腸菌を効率的に死滅させることができる新しいキルスイッチ2種類を報告している。Deadmanスイッチは、連続的に発現する毒素が細胞を殺さないようにするために外的な化学物質を必要とする細菌株を作製した過去の研究に基づいており、今回は系の小回りおよび信頼性を改善する変法が報告されている。Passcodeスイッチは、転写因子タンパク質の一部分が化学シグナルに応答して別の部分が特定のDNAセグメントを制御するという複合的な転写因子を利用して、細胞の制御に利用する化学シグナルをうまく組み合わせることができる。Collinsたちは、このカスタマイズにより、求める特定の用途に従って細菌を仕立てることができると指摘する。
最後にCollinsたちは、Passcodeスイッチは適切なパスコード分子を用いずに無許可で細菌株を培養しても細胞死を招くため、特に知的財産権保護用のツールとしても有用ではないかと示唆している。
doi:10.1038/nchembio.1979
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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