Research Press Release
筋肉中に蓄積される脂肪の起源
Nature Cell Biology
2010年1月18日
損傷した筋肉内での脂肪組織の形成について調べた研究が2つ発表された。脂肪の蓄積は筋ジストロフィーのような疾患に関連してみられ、今回の研究はこうした疾患に対する治療法の開発に関係してきそうだ。
健常な筋肉の再生は複数種の細胞の応答に依存しており、その中には成体筋幹細胞であることが知られている衛星細胞が含まれる。上住聡芳たちは、培養細胞とマウスの両方で脂肪組織の形成にかかわっている、衛星細胞とは別の前駆細胞集団を見つけた。PDGFRα+とよばれるこの細胞は、健常な筋細胞中では働きが抑制されているが、マウスの損傷を受けた筋肉に移植されると増殖するようになる。
同じ問題を調べたF Rossiたちも、筋組織中にあって脂肪を形成する前駆細胞集団を同定している。移植実験により、これらの前駆細胞をマウスの損傷した筋肉中に移植すると脂肪組織が形成されるが、健常な筋肉中に移植した場合は脂肪形成が起こらないことが明らかになった。この細胞集団は修復に直接かかわるわけではないが、筋肉の機能回復を促進できる。
著者たちは、このような脂肪組織前駆細胞を標的とすることで、瘢痕形成の低下や筋疾患治療の戦略設計に新しい道が開けると考えている。
doi:10.1038/ncb2014
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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