動物学:手に余るほどの餌があると付き合いを広げるカレドニアガラス
Nature Communications
2015年11月4日
カレドニアガラスの社会的相互作用の大半は身近な家族との相互作用だが、それ以外の個体と分かち合える食物資源に関する重要情報があれば、例外的にそれらの個体とも相互作用するという結論を示した論文が掲載される。著者は、カレドニアガラスの社会的ネットワークの動態における変化が文化的形質(例えば、道具の利用)の拡散を促進する可能性があるという考え方も示している。
カレドニアガラスは、道具(例えば、小枝や大枝)を使って樹皮の穴を調べて餌となる昆虫を探すことが知られている。そうした技能は、それを見ていた他のカレドニアガラスへ社会的学習によって伝わると考えられているが、どの程度の知識が伝達されるのかは群れの中での社会的相互関係の構造に依存している可能性が高い。
今回、James St Clairたちは、高分解能の無線技術を利用して、複数の家族が含まれる群れの中のカレドニアガラスの相互作用を追跡調査し、相互作用の大部分が少数の遺伝学的に近縁な個体間やつがい内で起こることを明らかにした。これに対して、利用するために道具を必要とする食物源を実験的に導入したところ、ネットワークの全体的な接続性が急速に増し、それまで関わりのなかった個体間の相互作用が急に活発化した。
一方、複数の家族が含まれる群れを2つ選び、それらの縄張りの中間点に同じ食物源を導入する実験では、上述したようなネットワークの変化は観察されず、上述の相互作用が非常に局所的なものであることが示唆された。このように食物源の出現に対応して局所的な社会的ネットワークの接続性が増したことは、文化情報が伝達される機会も増え、道具の使用の拡散が促進される可能性が生じることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms8197
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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