【動物学】生きているシーラカンスとシーラカンスの化石から肺が見つかった
Nature Communications
2015年9月16日
かつて絶滅種と考えられていた深海魚の一種であるシーラカンスに関して、このほど、生きたシーラカンスが肺を持っていることが確認された。この肺は、もはや機能していないと考えられているが、シーラカンスの太古の近縁種が約4億1000万年前にどのように生きていたのかという点を解明する手掛かりとなる。この研究成果についての報告が、今週掲載される。
肉鰭類の大型魚であるシーラカンスは、絶滅種と考えられていたが、1938年に南アフリカ沖でLatimeria chalumnaeが発見され、「生きている化石」の地位を得た。Latimeria種は、化石種と異なり、浅い海への適応と考えられている特有の「石灰化した肺」を持っておらず、現生種のシーラカンスの解剖学的構造に化石種の名残があるのかどうかは、現在まで解明されていない。
今回、Paulo Britoたちは、X線断層撮影法という画像化技術を用いて、シーラカンスの現生種L. chalumnaeの肺の5つの発生段階を三次元的に再構成した。その結果、L. chalumnaeの初期胚には、正常に機能する可能性のある十分に発達した肺があるが、その成長が後期胚期、幼若期、成体期になって相当に鈍化して、機能しない器官(痕跡器官)と化すことが確認された。
また、Britoたちは、Latimeria種の成体標本において、退化した肺の周囲に弾力性のある小さな板状組織が散在していることを報告しており、これがシーラカンスの化石種の「石灰化した肺」に匹敵するものだという見解を示している。この板状組織は、鰓呼吸をする現生種の役には立たないが、化石種においては肺容量の調節に何らかの役割を果たしており、シーラカンスが深海環境に適応するにつれ、その機能が失われていったと考えられている。
doi:10.1038/ncomms9222
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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