【動物学】生息地の「方言」を学習するマッコウクジラ
Nature Communications
2015年9月9日
マッコウクジラの社会で、文化的学習を通じて、さまざまな方言が生じていることを明らかにした研究論文が、今週掲載される。今回の研究は、人類の文化の形成の根底にある過程に似たものが複雑な動物の社会でも働いていることを示唆している。
マッコウクジラは、人間が社会生活を営んでいるのと同様に、マルチレベルのグループで生息している。つまり、家族単位内の個体が集合して、より大きなクラン(群れ)を形成している。それぞれのクランは、「カチッ、カチッ」というクリック音のレパートリーのパターンが類似しているかどうかで区別できるが、海中には各グループを分離する物理的障壁がないにもかかわらず、数々のクランが生じる過程は十分に解明されていない。
今回、Mauricio Cantorたちは、18年間にわたって蓄積されたガラパゴス諸島周辺に生息するマッコウクジラの社会的相互作用と発声に関するデータセットを用いて、こうした発声をするクランが出現した過程として最も可能性の高いものが何であるのかを調べた。Cantorたちは、エージェント・ベース・モデルを用いて個体間の相互作用のシミュレーションを行い、自分たちと行動の似ている他のクジラの発声を選択的に学習することでクランが形成される可能性が最も高いことを明らかにした。
また、Cantorたちは、グループ内での鳴き声構造の遺伝的継承や鳴き声の形式の機会的固定といったシナリオでは、野生種において観察されたパターンを説明できないことを明らかにした。このことは、グループ内での情報の流れ(例えば、情報伝達シグナルの形式)がクランの出現の原因であり、そのまとまりを維持する上で役立つ可能性のあることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms9091
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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