Research Press Release
ハンチントン病における共食いの失敗
Nature Neuroscience
2010年4月12日
ハンチントン病(HD)では蓄積した変異体タンパク質を取り除けないが、その原因は、破壊したいタンパク質を神経のタンパク質分解装置が認識して包み込むのがうまくいかないためである。Nature Neuroscience(電子版)に発表された研究は、HDの治療に有効となりうる標的を示唆している。
HDの細胞学的特徴の1つに変異体タンパク質ハンチンチンの蓄積があり、この蓄積は最終的に脳の細胞死につながる。過剰に蓄積したタンパク質は通常、細胞が分解の目印をつけられたタンパク質と自己の成分とを同時に消化するオートファジー(自己食作用)とよばれる細胞反応により除去される。神経変性疾患では、異常なオートファジーもみられる。
A M Cuervoらは、HD患者の細胞とHDモデルマウスの細胞を利用し、タンパク質を分解装置へと運ぶ細胞内「輸送車」が積み荷を認識できないことを明らかにした。Cuervoらは、変異体ハンチンチンが適切に取り除かれないので、HD細胞特有のタンパク質凝集物が増加して細胞の欠陥が起こると考えている。
doi:10.1038/nn.2528
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature