Research Press Release

無傷の組織が担う調節機能

Nature Immunology

2011年3月28日

無傷の骨髄組織における細胞接触が、造血幹細胞の恒常性維持に必要な可溶性因子「CXCL12」の分泌制御において調節的な役割を担うことが明らかになった。この知見は、生理的状況と臨床的状況での幹細胞の動員を調節する機構に関する新たな手がかりといえる。

骨髄間質細胞は、シグナル伝達分子の一群を分泌し、幹細胞の維持、自己複製、拘束と分化に必要な一意的な微小環境を作り出す。今回、T Lapidotらは、相互に連絡した間質細胞の間での高速なカルシウムの流れがCXCL12の分泌を調節することを見出した。細胞接触を一時的に阻害する可能性のある軽度の出血や細菌感染といったストレスシグナルは、CXCL12の分泌を遮断し、造血幹細胞の増殖やニッチからの動員を誘発することがある。

サイトカインである顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を臨床的に繰り返し投与して、造血幹細胞の骨髄から循環血中への動員を促進することは、骨髄移植プロトコルの一部になっている。骨髄間質細胞の接触を阻害することは、G-CSF療法の作用機序の一要素なのかもしれない。

doi:10.1038/ni.2017

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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