米国沿岸都市の洪水リスクが高まっている
Nature Climate Change
2015年7月28日
米国の主要沿岸都市で、高潮と豪雨の組み合わせを原因とする複合的沿岸洪水現象の発生回数が、過去1世紀間に著しく増加したことが判明した。また、こうした現象の発生確率は、太平洋岸より大西洋岸とメキシコ湾岸の方が高いことも明らかになった。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
米国の人口の約40%は沿岸地域の住民だ。沿岸地域は、通常、人口が密集し、高度に発展した低地であり、社会、経済、環境に広範な影響を及ぼすことがある。高潮と豪雨が同時発生した場合に沿岸の低地で洪水が発生する可能性は、高潮と豪雨のいずれかが発生した場合より高くなることが多い。
今回、Thomas Wahlたちは、米国本土で高潮と豪雨が同時発生する確率を算定した。例えば、ニューヨーク市で観測された複合現象の増加の原因は、豪雨を起こしやすい高潮の気象パターンであり、高潮を伴う豪雨を主たる要因とする気象現象ではないことをWahlたちは明らかにした。また、高潮と豪雨の同時発生は、特定の条件下で、洪水リスクを105年に1回に上昇させた。これに対して、降水と高潮をそれぞれ独自なものと考えた場合の洪水リスクは、245年に1回だった。今回の研究では、米国沿岸地域で洪水が増えたことの主な要因は長期的な海水準上昇だが、人為的な気候変動と非人為的な気候変化と関連した高潮と降水の同時分布の変化によって洪水の発生可能性がさらに高まっていることが明らかになった。
doi:10.1038/nclimate2736
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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