【免疫】さらに強力なインフルエンザワクチンに向けた一歩
Nature Communications
2015年7月22日
マウスを使った研究で、新たに発見されたヒト抗体がA型インフルエンザウイルスのいくつかの亜型を中和できることが明らかになった。この新しい抗体は、A型インフルエンザウイルスとの結合様式が通常と異なっており、これまでより強力なワクチンの設計に役立つ可能性があると考えられている。この研究成果についての報告が、今週掲載される。 A型インフルエンザウイルスは、3タイプあるインフルエンザウイルスの中で症状が最も重く、宿主種の範囲が最も広い。広範囲中和抗体がインフルエンザウイルスと結合する仕組みを解明することは、中和の標的となる特異的な領域を同定する上で重要だ。
今回、George Gaoたちは、2009年に大流行したブタインフルエンザ(H1N1亜型)の回復期にある患者の免疫細胞を調べて、強力な中和作用を有する抗体を単離した。この抗体は、インフルエンザウイルスのいくつかの亜型と結合し、影響を受けやすい細胞のウイルス感染を防いだ。また、この抗体をA型インフルエンザウイルスに感染したマウスに投与する実験では、H1N1、H3N2、H5N1亜型ウイルスと最近になって出現したヒトに感染するH7N9亜型ウイルスの場合に症状の悪化と死を防ぐ効果が認められた。この抗体とその他の広範囲中和抗体は有効範囲が非常に広いため、こうした抗体を現在流行しているウイルスと今後流行するウイルスに対する新たな抗ウイルス薬として使える可能性があることが示唆されている。
doi:10.1038/ncomms8708
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