Research Press Release
【幹細胞】微小な心室
Nature Communications
2015年7月15日
ヒトの幹細胞が受ける機械的、生化学的シグナルを変えることで、拍動する心臓に似た微小で原始的な構造の形成を誘導したという報告が、今週掲載される。この構造は、心臓の正常な発生と発生異常の研究に役立ち、「チップ上の臓器」として新薬開発に利用できる可能性があると考えられている。
今回、Kevin Healy、Bruce Conklinたちは、培養基板に物理的パターンを彫り込み、それを利用して、既知組成培地でヒト幹細胞のコロニーを培養した。この実験で、幹細胞は心筋細胞を含むさまざまなタイプの心臓細胞に分化し、これらの細胞が自己組織化し、拍動する微小な心室を形成した。
また、形成中の微小心室をサリドマイド薬(胎児の心臓形成に悪影響を及ぼすことが知られる薬剤)にさらしたところ、正常な発生をしなくなった。このことは、この組織培養系が薬物スクリーニングで何らかの役割を果たす可能性を明確に示している。すでに類似の組織培養系は存在しているが、細胞の三次元培養ではなく二次元培養によるものであるため、薬剤が胎児の心臓の正常な三次元的な発生に影響を及ぼす過程を予測することはできない。
doi:10.1038/ncomms8413
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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