【進化】ヒトの手はチンパンジーの手よりも原始的かもしれない
Nature Communications
2015年7月15日
ヒトの手のプロポーションは、チンパンジーとヒトの最終共通祖先の手とほとんど変わっていないという見解を示した論文が今週掲載される。また、現生人類の手の構造がほとんど原始的な性質を有しており、石器製作を背景とした選択圧の結果ではなかったことが、今回の研究結果で示されている。
ヒトの手は、人差し指に対する親指の長さの比率が高い。これは、ヒトと類人猿が最も大きく異なっている形質の1つで、ヒトが繁栄した理由の1つとされることが多い。しかし、ヒトの手の進化の過程については複数の学説が競合している。
今回、Sergio Almecijaたちは、ヒト、生きている類人猿、類人猿の化石、ヒトの祖先種(Ardipithecus ramidus、Australopithecus sedibaなど)の化石について、手のプロポーションを測定して、手の段階的進化について解明を進めた。今回の研究では、チンパンジーとオランウータンにおいて指の伸長の収斂進化が最近になって起こり、ヒトとヒトの祖先種、ゴリラの場合には比較的わずかな変化しか生じなかったことが明らかになった。
今回の研究結果は、ヒトが、他の手先の器用な類人猿との収斂進化によって、人差し指に対する親指の長さの比率が高い手を得たという仮説を裏付けている。また、この研究結果は、チンパンジーのような手がチンパンジーとヒトの最終共通祖先の出発点であったという仮説に疑問を投げ掛けている。
doi:10.1038/ncomms8717
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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