Volume 615 Number 7954

今週のハイライト

目次

Editorials

慢性疼痛の治療において、その複雑な駆動要因を考慮しなかったり、その存在自体を否定したりすることで、何百万人もの患者が不必要に苦しんでいる。

Treat pain as a priority, not an afterthought p.765

doi: 10.1038/d41586-023-00885-6

水資源を巡って国家間の対立が激しくなっているが、科学は、より良い解決策を得るために役立つだろう。

Global action on water: less rhetoric and more science p.766

doi: 10.1038/d41586-023-00886-5

News

SARS-CoV-2の起源に関する研究で、SARS-CoV-2は動物起源で、中間宿主として特にタヌキが疑わしいことを示す新たな分析結果が。

COVID-origins study links raccoon dogs to Wuhan market: what scientists think p.771

doi: 10.1038/d41586-023-00827-2

OpenAIがGPT-4を発表したが、その基礎となっている技術は隠されたままであり、研究者からはその安全性について懸念の声も。

GPT-4 is here: what scientists think p.773

doi: 10.1038/d41586-023-00816-5

2023年国連水会議開催に際し、世界が直面している水資源危機の実情を、4つの図で解説。

The world faces a water crisis — 4 powerful charts show how p.774

doi: 10.1038/d41586-023-00842-3

卓越した技術によって、ヒト脳を構成する重要な細胞が、幹細胞からどのように発生するかが明らかに。

How stem cells make a human brain p.776

doi: 10.1038/d41586-023-00762-2

2023年のアーベル賞は、さまざまな物理現象を記述する偏微分方程式の研究で知られる、アルゼンチン生まれの数学者Luis Caffarelliに。

Abel Prize: pioneer of ‘smooth’ physics wins top maths award p.777

doi: 10.1038/d41586-023-00833-4

設立から1年を迎える米国医療高等研究計画局(ARPA-H)の初代局長Renee Wegrzynに、これまでの経過と今後の構想について話を訊いた。

‘Open for business’: risk-taking US health agency ready to spend $2.5-billion budget p.778

doi: 10.1038/d41586-023-00817-4

News Features

科学出版を根底から覆す挑戦

Strife at eLife: inside a journal’s quest to upend science publishing p.780

eLifeが打ち出した「リジェクトなし」モデルを歓迎する声も多いが、この編集方針の変更を巡って同誌の編集者たちが内紛する騒ぎになっている。

doi: 10.1038/d41586-023-00831-6

発見までの長い道のり

Chronic pain: the long road to discovery p.782

慢性疼痛については科学的な手掛かりが得られ、実行可能な治療も利用できるようになったが、さまざまな障害があり、いまだに何百万人もの患者が救われないままである。

doi: 10.1038/d41586-023-00869-6

News & Views

気候科学:融氷が南大洋のヒートシンクの邪魔をする

Southern Ocean heat sink hindered by melting ice p.799

今回、南大洋の底に熱を蓄える深層水の生成が南極の融氷によって減少することが、シミュレーションによって示された。包括的なモデルによって、この傾向が持続するかどうかが明らかになる可能性がある。

doi: 10.1038/d41586-023-00835-2

分子生物学:エピジェネティックな標識の遺伝の精査

Inheritance of epigenetic DNA marks studied in new mouse model p.800

DNAのメチル基などのエピジェネティックな標識が親から子へどのように伝えられるかについては、議論の的になっている。今回、DNAを標的部位でメチル化できるマウスモデルが登場したことで、研究者たちはこの過程をより詳細に調べられるようになるだろう。

doi: 10.1038/d41586-023-00708-8

構造生物学:明らかになった視覚の最初期の分子事象

Earliest molecular events of vision revealed p.802

脊椎動物の眼にあるロドプシンと呼ばれる光感受性タンパク質によって、視覚の細胞過程が始まる。今回、最先端の結晶学実験によって、光がこうしたタンパク質を活性化する分子機構が明らかになった。

doi: 10.1038/d41586-023-00504-4

フォーラム:神経科学:カルシウムセンサーの高速化

Fastest-ever calcium sensors broaden the potential of neuronal imaging p.804

今回、細胞へのカルシウムイオンの流入に応答して、ミリ秒の時間スケールで閃光を発するタンパク質が開発された。2組の科学者たちが、こうしたタンパク質の歴史と将来について論じている。

doi: 10.1038/d41586-023-00704-y

発生生物学:染色体数異常を起こしやすい培養を用いて雄の幹細胞から作られた卵

Eggs made from male mouse stem cells using error-prone culture p.805

今回、細胞培養において染色体を獲得したり失ったりする傾向を利用したマウス幹細胞の選別を用いて、雄のXY細胞が雌のXX細胞に変換された。その後の分化によって、機能性の卵が生じ、仔が生きて生まれた。

doi: 10.1038/d41586-023-00755-1

素粒子物理学:陽子の内部構造を垣間見る

A glimpse at the inner structure of the proton p.807

今回、陽子の質量が占める空間サイズが測定され、これまで考えられていたよりずっと小さいことが分かった。この結果は、こうした基本的な構成要素の複雑な構造の理解への重要な一歩である。

doi: 10.1038/d41586-023-00836-1

Articles

天文学:赤方偏移2.16に位置する原始銀河団における銀河団内ガスの形成

Forming intracluster gas in a galaxy protocluster at a redshift of 2.16 p.809

doi: 10.1038/s41586-023-05761-x

素粒子物理学:陽子のグルーオン重力形状因子を決定する

Determining the gluonic gravitational form factors of the proton p.813

doi: 10.1038/s41586-023-05730-4

量子物理学:シリコンにおける符号化されたスピンキュービットを用いた汎用論理

Universal logic with encoded spin qubits in silicon p.817

doi: 10.1038/s41586-023-05777-3

工学:CMOS上に集積化されたメモリスターにおける数千通りのコンダクタンスレベル

Thousands of conductance levels in memristors integrated on CMOS p.823

doi: 10.1038/s41586-023-05759-5

材料科学:近赤外域における輝度が高く安定したペロブスカイト発光ダイオード

Bright and stable perovskite light-emitting diodes in the near-infrared range p.830

doi: 10.1038/s41586-023-05792-4

生物物理学:ピコ秒時間スケールで再配線された光合成

Photosynthesis re-wired on the pico-second timescale p.836

doi: 10.1038/s41586-023-05763-9

気候科学:南極の融氷水によって駆動される深海の鉛直循環の減速と温暖化

Abyssal ocean overturning slowdown and warming driven by Antarctic meltwater p.841

doi: 10.1038/s41586-023-05762-w

生物地球化学:全球の陸域炭素シンクの不安定化リスクを診断する

Diagnosing destabilization risk in global land carbon sinks p.848

doi: 10.1038/s41586-023-05725-1

惑星科学:地球への水の運搬を制限した、初期に形成された微惑星の脱ガス

Degassing of early-formed planetesimals restricted water delivery to Earth p.854

doi: 10.1038/s41586-023-05721-5

生態学:10年にわたる海洋温暖化による浅海サンゴ礁生物の大陸規模での減少

Continent-wide declines in shallow reef life over a decade of ocean warming p.858

doi: 10.1038/s41586-023-05833-y

遺伝学:中世のスワヒリ海岸の人々におけるアフリカ系とアジア系の遺伝的起源の絡み合い

Entwined African and Asian genetic roots of medieval peoples of the Swahili coast p.866

doi: 10.1038/s41586-023-05754-w

健康科学:小児と思春期の若者の成長と発達に対する都市生活の恩恵は減少している

Diminishing benefits of urban living for children and adolescents’ growth and development p.874

doi: 10.1038/s41586-023-05772-8

神経科学:神経集団画像化のための高速かつ高感度なGCaMPカルシウムインジケーター

Fast and sensitive GCaMP calcium indicators for imaging neural populations p.884

doi: 10.1038/s41586-023-05828-9

神経科学:ドリフトや再配向の際の頭方向ニューロンの集団動態

Population dynamics of head-direction neurons during drift and reorientation p.892

doi: 10.1038/s41586-023-05813-2

発生生物学:in vitroで雄マウスから機能的卵母細胞を作製

Generation of functional oocytes from male mice in vitro p.900

doi: 10.1038/s41586-023-05834-x

免疫学:免疫グロブリンMのFcμRによる認識

Immunoglobulin M perception by FcμR p.907

doi: 10.1038/s41586-023-05835-w

がん:MEN1変異はメニン阻害に対する臨床的抵抗性を仲介する

MEN1 mutations mediate clinical resistance to menin inhibition p.913

doi: 10.1038/s41586-023-05755-9

がん:KMT2A再編成型またはNPM1変異型白血病におけるメニン阻害剤レブメニブ

The menin inhibitor revumenib in KMT2A-rearranged or NPM1-mutant leukaemia p.920

doi: 10.1038/s41586-023-05812-3

分子生物学:全ゲノム倍加はクロマチン分離の発がん性喪失を促す

Whole-genome doubling drives oncogenic loss of chromatin segregation p.925

doi: 10.1038/s41586-023-05794-2

構造生物学:I–II–III2–IV2超複合体によるミトコンドリア膜の屈曲の構造基盤

Structural basis of mitochondrial membrane bending by the I–II–III2–IV2 supercomplex p.934

doi: 10.1038/s41586-023-05817-y

構造生物学:超高速の構造変化により誘導される最初の視覚分子事象

Ultrafast structural changes direct the first molecular events of vision p.939

doi: 10.1038/s41586-023-05863-6

分子生物学:機械刺激とリガンドに依存する接着型GPCR解離の分子センシング

Molecular sensing of mechano- and ligand-dependent adhesion GPCR dissociation p.945

doi: 10.1038/s41586-023-05802-5

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