神経科学:ドリフトや再配向の際の頭方向ニューロンの集団動態
Nature 615, 7954 doi: 10.1038/s41586-023-05813-2
頭方向(HD)システムは、脳の内的コンパスとして機能し、以前から一次元的な環状アトラクターネットワークとして形式化されている。地球上の一貫した磁気コンパスとは対照的に、HDシステムに普遍的な参照枠はない。その代わり、HDシステムは局所的な手掛かりに係留して、手掛かりが回転しても安定した補正を維持し、参照対象がないとドリフトする。しかし、固定やドリフトの基盤となる機構についての疑問は未解明のままで、集団レベルで対処するのが最善である。例えば、再方向付けやドリフトの条件下で、集団活動の一次元的記述がどの程度まで適用できるのかは不明である。今回我々は、視覚目標を制御回転させている状態における視床HD細胞の集団活動記録を、カルシウム画像化によって実行した。集団活動は、実験を通して、ネットワークゲインと名付けた第二の次元に沿って変化し、手掛かりが混同しやすかったりあいまいだったりする状況下では特にそうだった。この次元に沿った活動から、ネットワーク再編成のスピードなど、再編成やドリフトの動態を推測できた。暗所では、ネットワークゲインは、その前に提示された目標への「記憶痕跡」が維持された。さらなる実験から、HDネットワークは、短時間の回転手掛かりの提示の後では基準方向に戻ったが、提示が長いとそうならないことが実証された。こうした経験依存性から、過去のHDニューロンと他者中心的な手掛かりとの間の連合記憶は維持され、内的なHD表現に影響していることが示唆される。これらの結果に基づいて、我々は、視覚目標の継続回転がHD表現の回転を誘発し、これが暗所で維持されることを示す。これによって、HDシステムが経験依存的に再較正されることが実証された。さらに我々は、神経コンパスが、変化する環境手掛かりに柔軟に適応し、信頼し得るHD表現を保つ仕組みを形式化する計算機モデルを提案する。今回の結果は、HDシステムの旧来の一次元的解釈に疑問を呈するものであり、HDシステムとそれが係留する手掛かりとの間の相互作用についての洞察を提供する。

