The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

彗星の強度

Nature 586 2020年10月29日

67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を対象に行われたロゼッタ・ミッションのハイライトは、着陸機フィラエをこの彗星の表面に着地させることであった。このミッションは、この面では当初の計画通りに進まなかった(フィラエは着地の際に2回バウンドし、理想的ではない場所で静止した)が、それでもこの彗星表面の特徴について独自の知見をいくつももたらした。学ぶべきことはまだ残されており、L O’Rourkeたちが今回報告しているように、接地に関する一見無秩序な側面であっても、この彗星についての新たな情報を提供してくれるのである。彼らは、宇宙の探偵作業といった芸当で、バウンドした着陸機の軌跡を復元し、今まで分かっていなかった2回目の接地場所を画像で特定した。フィラエは偶然にも巨礫の間をかすめるように通過したと見られ、手付かずの始原氷に富む内部を露出させ、その精査を可能にした。さらに、フィラエが残した跡の形状から、巨礫の固有強度も算出できた。推定された非常に低い圧縮強度は、将来の彗星着陸機を計画する際の重要な制約条件となり、彗星自体の形成過程についてのいくつかの手掛かりも与えてくれる可能性がある。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02941-x

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2834-3

2

チタンシリカライト1の二核Ti部位での高効率エポキシ化

Nature 586 2020年10月29日

チタンシリカライト1(TS-1)は工業的に利用されている優れたエポキシ化触媒で、年間100万トン以上のプロピレンオキシドの生産に貢献している。TS-1はほぼ40年にわたって研究されており、その触媒特性は一般に、ゼオライト骨格内の孤立Ti(IV)部位に起因すると考えられてきた。今回C Copéretたちは、分光法、顕微鏡法、理論計算を用いて、特に高い活性と選択性を示す一連のTS-1エポキシ化触媒を詳細に調べた結果について報告している。TS-1の効率と選択性は、均一系エポキシ化触媒に見られるのと同様に、二核Ti部位の存在によって容易に説明されることが明らかになった。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02942-w

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2826-3

3

金属を用いないホウ素化

Nature 586 2020年10月29日

ホウ素は、有機分子に複雑性を導入する汎用的な手段となっている。これまで、C–H結合をホウ素化する戦略の全てで、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)などの遷移金属触媒が用いられてきた。今回V Aggarwalたちは、金属を用いずに、光を用いてアルキルC–H結合にボロン酸エステルを組み込む方法を報告している。塩化物触媒を用いる光誘起水素原子移動によってアルキルラジカルが形成され、次にこのラジカルがジボロン試薬と直接反応することでC–B結合が形成される。この方法はまた、第二級位や第三級位の弱いC–H結合よりも、強い第一級C–H結合に対する選択性が高いので、これまでの方法も補完する。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2831-6

4

生物多様性および気候のための生態学的修復

Nature 586 2020年10月29日

生態系の修復は、生物多様性の保全および地球の気候の安定化に重要であるとの見方が強まっている。国レベルや世界レベルで意欲的な目標が設定されているが、利益とコストの空間的差異につながる全球の優先地域はいまだ特定されていない。B Strassburgたちは今回、全ての陸上バイオームにわたって修復の優先地域を特定し、それらの地域の修復が生物多様性、気候変動の緩和、コストにもたらす結果を推定するための多基準最適化法を開発している。この手法を適用したところ、優先地域において転換された土地の15%を修復すれば、予想される絶滅の60%が回避され、299ギガトンのCO2を隔離できることが示された。このCO2量は、産業革命以降の大気中CO2の総増加量の30%に相当する。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02750-2

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2784-9

5

未確定の潜在能を持つクローン造血の遺伝的基盤

Nature 586 2020年10月29日

未確定の潜在能を持つクローン造血(CHIP;clonal haematopoiesis of indeterminate potential)とは、体細胞変異が白血球に選択的優位性をもたらし、クローン増殖を引き起こし得る過程のことである。S KathiresanとP Natarajanたちたちは今回、総数9万7691人のTOPMedプログラム参加者のうち4229人でCHIPを検出し、CHIPは血液、脂質、炎症の形質と関連することを明らかにしている。このうちの6万5405人の集団(CHIPドライバーを有する3831人を含む)におけるゲノム規模関連解析では、CHIPの状態と関連する3つの遺伝的座位が見つかった。その1つはTET2近傍の座位で、アフリカ系の祖先を持つ参加者に固有だった。TET2座位の機能評価から、遠位エンハンサー機能の破壊が、CHIP状態と関連する原因機構らしいことが分かった。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2819-2

6

生殖系列の遺伝的変動は骨髄増殖性腫瘍と関連する

Nature 586 2020年10月29日

骨髄細胞の過剰産生は骨髄増殖性腫瘍(MPN)の特徴であり、MPNは造血幹細胞(HSC)における体細胞ドライバー変異の蓄積に起因する。V Sankaranたちは今回、3つのコホート(英国バイオバンク、FinnGen、23andMe)を用いて、全部でMPN症例3797例および対照115万2977例のゲノム規模の関連解析を行い、MPNリスクに関連する可能性のある生殖系列の遺伝的バリアントをマッピングした。その結果、17座位が特定され、そのうちの7座位はこれまでに報告されていないものであった。詳細にマッピングされた一連のMPNリスクバリアントを用いることで、多能性HSCがMPNの原因となる細胞タイプである可能性がはっきりと示された。また、in silico解析および実験的追跡解析から、チェックポイントキナーゼ2(CHEK2)およびジンクフィンガータンパク質GFI1BがHSCの自己複製に役割を担っていることが示された。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2786-7

7

イヌのSARS-CoV-2感染

Nature 586 2020年10月29日

M Peirisたちは今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定患者の世帯で飼育されていたイヌ15頭のうち2頭が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染していたことを明らかにしている。イヌのウイルスはヒトのウイルスと一致しており、感染した2頭は抗体反応を示したが無症状であった。この研究から、SARS-CoV-2がヒトから動物へ伝播する可能性が示唆された。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2334-5

8

ホスファターゼの誘導による受容体阻害

Nature 586 2020年10月29日

R Fernandesたちは今回、抑制性受容体であるPD-1は、PD-L1リガンドが結合していない場合にトニックシグナル伝達を生じることを示している。このシグナル伝達はT細胞機能を抑制し、リガンドに拮抗する抗体による治療的遮断に対して反応しない。著者たちは、二重特異性抗体を使ってホスファターゼCD45をPD-1に誘導し、PD-1受容体の脱リン酸化を引き起こして、このトニックシグナル伝達を減弱させ、T細胞エフェクター機能を高める機構について報告している。広範に作用するホスファターゼを誘導して受容体活性を調節する方法は、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)やITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)を有する他の免疫受容体にも広く適用可能であり、この方法が、患者の宿主免疫を調節するためにより広く使用できることを示している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2851-2

9

スイスチーズに似た新型の内皮細胞「アエロサイト」の発見

Nature 586 2020年10月29日

A Gillichたちは今回、単一細胞トランスクリプトミクスと単一細胞画像化法を用いて、肺胞の毛細血管内皮が2種類の細胞タイプで構成されていることを明らかにしている。1つはガス交換と白血球の輸送に特化した肺特異的な内皮細胞で、著者たちはこれを「アエロサイト(aerocyte;別名aCap)」と名付けた。もう1つの細胞は、アエロサイトに比べると他の血管床に見られる毛細血管細胞により似ているので、gCap(「一般的な」毛細血管)細胞と名付けられた。大型で複雑なアエロサイト(枝状に分岐した突起があり、それが孔を囲んでいるので、スライスしたスイスチーズによく似ている)は爬虫類の肺には見られないが、ヒトとマウスではgCap細胞とアエロサイトは共通の前駆細胞から生じ、混在して互いに連絡を取り合いつつ、相互に異なる補完的な機能を担っている。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2822-7

10

相同組換えの詳細を見る

Nature 586 2020年10月29日

細菌のDNA鎖交換タンパク質であるRecAは、一本鎖DNA上に集合し、次いで二本鎖DNAに入り込んでD(displacementの略)ループとして知られる構造を形成する。今回N Paveltichたちは、一本鎖DNA上のRecAミニフィラメントが相補的二本鎖DNAと非相補的二本鎖DNAの両方と結合した状態の構造を報告している。得られた画像から、二本鎖DNAが開裂し、DNAがRecAの第二のDNA結合部位に結合する仕組み、さらにこの結合が置き換えを引き起こす仕組みが明らかになった。重要なのは、この構造から、開裂拡大の障壁と思われる事態が相同性により乗り越えられる機構だけでなく、相同性が検出できない場合に開裂部分の長さを制限する機構も明らかになったことである。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02831-2

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2820-9

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