The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

白色矮星をトランジットする巨大惑星

Nature 585 2020年9月17日

太陽質量やより小さな質量の恒星は、まず赤色巨星として膨張した後、外層を放出して白色矮星を残し、その一生を終える。赤色巨星段階では、恒星の大気は近くにあるあらゆる惑星を飲み込み、おそらくそれらを破壊する一方、より外側の惑星は生き残る可能性がある。岩石質の物質を吸収したことを示す化学組成を持つ白色矮星がいくつも発見されており、最近は、氷惑星(つまり天王星や海王星のような惑星)の組成を持つ円盤に取り囲まれた白色矮星も観測された。今回A Vanderburgたちは、木星サイズの惑星が白色矮星の周りを軌道運動し、これをトランジットしていることを報告している。この惑星の軌道周期は1.4日である。この惑星の存在は、巨大惑星が、潮汐破壊を受けることなく内側に向かって散乱され得ることを示唆している。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02555-3

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2713-y

2

世界最小の超音波検出器

Nature 585 2020年9月17日

超音波検出器は、高周波音波を利用して物体の検出や距離の測定を行う。超音波検出は、重要な医用撮像技術であるが、一般的には音波の検出に圧電変換器が用いられており、小型化が困難である。今回V Ntziachristosたちは、汎用性の高いシリコン・オン・インシュレーター・プラットフォームを用いて、検出される音波の波長の200分の1にまで小型化された世界最小の超音波検出器を開発した。今回の光共振器設計は、超高密度検出器アレイの製造に適しており、大規模アレイへの多重化は難しいかもしれないが、今回の手法によって超音波撮像の分解能が大幅に向上する可能性がある。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2685-y

3

昆虫の眼から着想を得た機能性ナノ被覆層

Nature 585 2020年9月17日

今回V Katanaevたちは、ガの眼の角膜に見られるナノパターン被覆層を人工の類似物で再現する方法を報告している。ショウジョウバエ属(Drosophila)のハエでは、こうしたナノ被覆層は構造的に多様で、反射防止特性や付着防止特性があることが分かっている。こうした角膜ナノ被覆層はまた、ナノスケールの生物学的チューリングパターンを示すことが報告された、既知で最初の例である。著者たちは、リバースエンジニアリングによって、生体角膜の化学と構造と機能の間の関係を詳細に調べた後、フォワードエンジニアリングによって類似の構成要素を選択または合成し、それらの構成要素を自己集合させて、生体のナノ被覆層に似た構造を持ち、制御可能な反射防止機能や付着防止機能を備えたチューリング様パターンを実現した。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2707-9

4

胚発生過程での中間径フィラメントの新たな役割

Nature 585 2020年9月17日

中間径フィラメントは、細胞骨格の3つの主要構成要素の1つである。これらのフィラメントに起因する主な機能は構造的支持の一端を担うことだが、多くのシグナル伝達事象において重要な調節の役割も担っている。N Plachtaたちは今回、中間径フィラメントの一種であるケラチンが、哺乳類の胚形成の際に起こる既知で最初の細胞運命決定における運命決定因子であることを明らかにしている。初期胚では、ケラチンは細胞分裂の際に娘細胞間に非対称に分配されることが分かった。次に、この非対称な分配によって胚の最初の細胞系譜決定が引き起こされ、ケラチンを多く受け継いだ細胞は栄養外胚葉のアイデンティティーを持つようになり、ケラチンの量が少ない細胞は内部細胞塊の運命をたどる。以上よりこの研究は、胚発生における最初期の分子事象および細胞事象についての理解を深め、細胞系譜を指定する上で中間径フィラメントが果たす新たな役割を明らかにしている。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2647-4

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02443-w

5

中国のCOVID-19封じ込めのモデル化

Nature 585 2020年9月17日

S Laiたちは今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学データと、人の移動に関する過去およびほぼリアルタイムの匿名化データを用いて、中国本土の340地級市にわたるCOVID-19の広がりのシミュレーションを行った。彼らはこのモデル化の枠組みを使って、都市間の人口移動の制限、症例の特定と隔離、都市内の移動の抑制など、中国のさまざまな非医薬品介入の効果を調べている。その結果、複数の非医薬品介入の組み合わせによって得られる効果が最も大きく、最も早かったが、症例の早期発見と隔離は移動制限よりも多くの感染を予防すると思われることが分かった。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2293-x

6

OPN5を介したマウスの光応答性中枢神経軸

Nature 585 2020年9月17日

オプシン5(OPN5)は、鳥類の脳深部にある紫色光感受性の光受容分子として知られ、季節性の繁殖行動の制御に関わるとされてきた。今回K Zhangたちは、マウスにも同様に、視床下部の視索前野に紫色光感知ニューロンが存在することを示している。これらの脳深部ニューロンはOPN5分子を介して光を感知し、褐色脂肪組織での適応性熱産生を調節している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2683-0

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02481-4

7

内皮細胞の可塑性を操作する

Nature 585 2020年9月17日

B Palikuqiたちは今回、成熟内皮細胞において転写因子ETV2の発現を一過性に再活性化すると、これらの細胞のエピジェネティックな全体像が変化し、胚性内皮細胞と同様に順応性のある細胞になることを示している。著者たちは、「リセット血管内皮細胞(R-VEC)」と名付けたこの細胞を用いて、三次元マトリックスにおいて大容量のマイクロ流体チャンバー中に多層の安定した血管ネットワークを作り出せること、そしてこのネットワークがヒトの血液を輸送できることを明らかにした。R-VECは、エピジェネティックな全体像とトランスクリプトームを再形成することで局所的な微小環境に適応し、脱細胞化した腸の足場、膵島、正常な大腸オルガノイドに加え、腫瘍オルガノイドで血管新生を行うこともできる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2712-z

8

皮膚がん構造の機械的調節

Nature 585 2020年9月17日

E Fuchsたちは今回、一連の実験的および数学的手法を用いて、2種類の皮膚がんで機械的力が構造を形成する仕組みを明らかにし、これが腫瘍形成を助けていることを示している。基底細胞がん(BCC)は、表皮から周囲の間質へと内部へ向けて簇出(浸潤)し、侵襲的となることはまれだが、扁平上皮がん(SCC)は、間質の中に折りたたまれるように入り込んで侵襲する。著者たちは、腫瘍前駆細胞の上と下の両方から加えられる機械的力が、腫瘍の構造を決定することを明らかにした。基底膜の軟化はBCCの簇出を促進するが、基底膜は維持される。これとは対照的に、基底膜の剛性が高まるとSCCの折りたたみが促進され、がんがより拡散しやすくなる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2695-9

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-02490-3

9

がんにおけるゲノム不安定性の機構的脆弱性

Nature 585 2020年9月17日

今回、中心体を欠いたがん細胞でゲノム不安定性を駆動する機構について、2つの研究から同じ結論が導き出され、この機構を治療に利用できる可能性が開かれた。R ChapmanたちのグループとK Oegemaたちのグループはそれぞれ、中心体の調節因子であるTRIM37の増幅が、PLK4阻害による中心体喪失へのがん細胞の感受性を高めることを明らかにしている。TRIM37の増加は中心体分離の調節を失わせ、有糸分裂エラーを促進してゲノム不安定性を引き起こす可能性があるが、さらに、中心体欠損細胞での細胞分裂に必要とされる非中心体凝集体の形成も阻害する。これはPLK4の阻害によって標的とすることができ、分裂期崩壊が誘導される。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2710-1

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2690-1

10

αシヌクレインを間近に見る

Nature 585 2020年9月17日

ヒトのタンパク質であるαシヌクレインは、神経変性疾患の悪名高いグループの1つであるシヌクレイノパチーと関連付けられており、このグループには多系統萎縮症(MSA)やパーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体型認知症(DLB)などが含まれる。M Goedert、M SchweighauserとY Shiたちは今回、ヒト脳から精製されたαシヌクレインの詳細な構造を初めて報告している。クライオ電子顕微鏡法によって、MSA患者の脳で見られるαシヌクレイン凝集体は2種類の繊維から形成されていて、これらの繊維はおのおのが2つの異なるプロトフィラメントからなることが明らかにされた。また、繊維中には非タンパク質性分子が存在することも示され、これはタウオパチーで得られている知見を連想させる。著者たちはまた、MSA患者に由来するαシヌクレイン繊維がDLB患者由来のものとは異なっていることを明らかにしており、この結果は、多様なタウオパチーの場合と同じく、多様なシヌクレイノパチーは、それぞれ異なる配座異性体、つまり異なるストレイン(strain)が原因であることを示唆している。また、in vitroで得られた細繊維の構造は、患者の脳から抽出された細繊維を再現していないという重要な結果も得られた。今回得られたこれらの知見は、脳内のαシヌクレイン凝集体を可視化するためのトレーサーの開発や、繊維形成を予防、阻害し、さらには形成された繊維を解消させるような分子の探索を助けると考えられる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2317-6

「Journal home」に戻る

プライバシーマーク制度