The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

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反物質と暗黒物質の出合い

Nature 575 2019年11月14日

暗黒物質とは何だろうか。この質問に答えるため、素粒子物理学や天体物理学で数々の野心的な研究プログラムが進められている。多くの暗黒物質候補の1つがアクシオンである。アクシオンは、スピンを持たない軽いボソンで、元々は量子色力学の強いCP問題を解決するため導入された。アクシオンと光子や電子の間の相互作用の強さの限界は分かっているが、反物質についての同様の情報はない。今回C Smorraたちは、極めて軽いアクシオン型素粒子と反陽子の相互作用を初めて直接的に絞り込んでいる。今回の成果は、他の反粒子との類似した相互作用を探る道を開くものである。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03431-5

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1727-9

2

究極のタッチスクリーンか

Nature 575 2019年11月14日

生み出された像が実際の空間で物理的体積を占有しているように見えるボリューム(体積型)ディスプレイは、SF映画によく出てくるものの1つである。平山竜士(英国サセックス大学)たちは今回、そうしたディスプレイを実現させることのできる方式を開発した。しかも、このディスプレイには、映像の他に可聴音と触感まで含むという利点がある。この方式の根底にあるのは、入念に構築された音場によって微小粒子がトラップされて移動する音響泳動である。すなわち、粒子に光が適切に照射され、粒子の動きが十分速ければ、粒子が自由空間に立体を描き出すように見える。その一方で、ディスプレイの駆動に音響場を用いているので、描き出された像から音が聞こえるようにもなり、さらには視聴者の皮膚に触感をも生じさせる。つまり、表示された像を見ることができ、聞くことができ、「触る」ことまでできるのである。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1739-5

3

ソフトな人工筋肉によるマイクロロボットの離昇

Nature 575 2019年11月14日

飛翔性昆虫は、慣性が小さいとともに、翅、外骨格、筋肉に復元力があるため、飛行中の衝突に耐えることができる。昆虫スケールの飛行ロボットは、今のところ剛性アクチュエーターを使って翅を制御しており、通常は非常に壊れやすいため、そのような外部衝撃に耐えることができない。ソフトな人工筋肉は、衝突時に生じる応力に耐えることのできる、飛行ロボットを動かすための有望な代替手段になるが、既存のソフトアクチュエーターは飛行ロボットの離昇を実現するのに十分な動力密度を供給できない。今回Y Chenたちは、ソフトな人工筋肉で動く空気より重い飛行ロボットを実証している。このロボットは、ホバリングできるだけでなく、飛行中の衝突から回復することもでき、次世代の敏捷なソフトロボットが開発される可能性を例示している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1737-7

4

多くのノズルで簡単に印刷

Nature 575 2019年11月14日

フィラメント材料の押出と堆積に基づくタイプの三次元印刷は、利用できるポリマーの種類が多く、複雑な構造を印刷できる。しかし、通常は単一のノズルを用いて単一の原材料から印刷されるので、2種類以上の材料を印刷して単一の構造を作ることは難しい。そのため、多材料物体を作製するには、部品を個別に印刷してから組み立てなければならない。今回J Lewisたちは、バルブを用いて同一印刷フィラメント内でさまざまな粘弾性インクを切り替えることによって、2種類以上の材料を同時に印刷可能にする装置を開発している。この装置と多ノズル装置を組み合わせることで、硬い部品と柔らかい部品からなる小型液圧式「ウォーカー」などの複雑な多材料構造が、比較的迅速に印刷できる。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03408-4

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1736-8

5

後退する氷河による水力発電の可能性

Nature 575 2019年11月14日

氷河の後退が加速しており、いくつかの地域では、早ければ2050年には氷が存在しなくなると予測されている。今回D Farinottiたちは、こうした退氷流域において生成される可能性のある水力電力を評価し、理論的には年間約1500テラワット時(TWh)の発電が可能であり、環境、建設、経済的な制約を考慮すると、このうち約500 TWhが実現可能であると見積もっている。この潜在的な水力電力は全世界の需要の数パーセントにすぎないが、現在氷河化のレベルが高い地域では地域的に重要になる可能性がある。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1740-z

6

TLR7とTLR9の応答調節

Nature 575 2019年11月14日

Toll様受容体(TLR)であるTLR7とTLR9は、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患において自己の核酸を感知する役割があることが知られている。TLR7とTLR9は全身性エリテマトーデスのマウスモデルにおいて相反する結果を示し、この病気はTLR9欠損マウスでは悪化するが、TLR7欠損マウスでは軽減する。TLR7とTLR9は異なった調節を受けることが示唆されるものの、これらのTLRの下流シグナル伝達の違いをもたらす機構は明らかにされていない。シャペロンのUNC93B1は、新たに作られた核酸結合性TLRのエンドソームへの輸送を行うトラフィッキング因子としてのみ機能すると考えられていて、UNC93B1へ結合する際のこれらのTLRの競合がin vivoで異なる役割を持つことを説明する機構として提唱されている。これについては議論が分かれていたが、G Bartonたちは今回、UNC93B1がシンテニン-1と相互作用し、TLR7–UNC93B1複合体の多胞体の内腔小胞へのソーティングを促進することを明らかにしている。多胞体への内在化はTLR7シグナル伝達を終結させると考えられており、マウスにおいてUNC93B1とシンテニン-1の相互作用を阻害すると、TLR7依存的な自己免疫が引き起こされることが分かった。これに対し、TLR9の活性化には、エンドソームにおけるUNC93B1からの解離が必要であり、このためTLR9が細胞外DNAによって活性化される可能性が減少している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1612-6

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1611-7

7

ミトコンドリアの恒常性を支える新技

Nature 575 2019年11月14日

ミトコンドリアが損傷したり機能を失ったりすると、細胞はマイトファジーと呼ばれる過程を経てこの小器官を廃棄して、恒常性を回復する。今回Z Aranyたちは、Parkinに依存したマイトファジーに関わる新たな因子を突き止めるため、CRISPR–Cas9を用いた遺伝子スクリーニングを行った。多数の新しい因子の中から特定されたのがアデニンヌクレオチド交換輸送体(ANT)複合体で、これはヌクレオチドの交換輸送体としての輸送活性でよく知られている。しかし著者たちは、ANTのこの機能はマイトファジーには必要ないことを見いだした。そうではなく、ANT複合体はTIM44タンパク質と相互作用して、ミトコンドリア内部へのタンパク質の輸送を行う交換輸送体TIM23を阻害する。この結果、PINK1が安定化されて、マイトファジーの進行が可能になる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1667-4

8

ミトコンドリア機能のin vivo画像化

Nature 575 2019年11月14日

ミトコンドリアはエネルギー産生や細胞代謝に不可欠であり、これは、がん細胞でも例外ではない。D Shackelfordたちは今回、ミトコンドリア機能をin vivoで画像化するための陽電子放射断層撮影法(PET)を開発した。この手法を用いた肺がんマウスモデルの観察により、腫瘍細胞間でミトコンドリア機能に明確な不均一性があることが分かった。著者たちは、この技術が、がんや老化、生理機能、疾患におけるミトコンドリア機能の影響に関するさまざまな研究に応用可能であると提唱している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1715-0

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03239-3

9

コヒーシンを介する抗体クラススイッチ組換え

Nature 575 2019年11月14日

免疫グロブリンのクラススイッチ組換えは、成熟B細胞の活性化後の、多様なクラスの抗体の産生を可能にしている。これには、定常領域遺伝子セグメントの上流にある保存されたヌクレオチドモチーフでのDNA二本鎖切断の生成と、それに続く対合が関与している。F Altたちは今回、スイッチ領域のドナー側とアクセプター側の二本鎖切断が適切な方向で並置されるには、染色体ループのコヒーシンに依存する突出が必要であることを示している。彼らは以前、B細胞のV(D)J組換えの際に同じような機構が作動していることを実証しており、これらと同類の機構が、一部のがんなどの疾患に繰り返し見られる欠失あるいは伸長の生成の一因ではないかと推測している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1723-0

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03200-4

10

クロマチン凝縮の動態

Nature 575 2019年11月14日

ヘテロクロマチンタンパク質HP1は、ヌクレオソームをオリゴマー化して相分離した凝縮物中に詰め込むことにより、クロマチンをまとめ上げると考えられている。今回G Narlikarたちは、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のHP1タンパク質Swi6が、ヌクレオソーム中に埋め込まれているヒストン残基を動的に露出させることによって、ヌクレオソームのオリゴマー化と相分離とを連動させていることを明らかにしている。Swi6がヌクレオソームコアを変形させると相分離が促進される。それはおそらく、ヌクレオソーム間に多価相互作用が生じる機会が増えるためだろう。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1669-2

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