The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

ニューロンの成熟は一方通行ではない

Nature 573 2019年9月19日

大脳皮質の発生過程では、神経前駆細胞は中間的な成熟段階を経ながら、運命の選択肢を徐々に限定していくことが知られている。しかし、これらの段階がどれほど可塑的・可変的なのかはよく分かっていない。D Jabaudonたちは今回、頂端前駆細胞はその細胞運命の過程で一方向に成熟するのではなく、より早期の発生段階に当たる環境にさらされると、以前の段階に再進入できることを見いだしている。対照的に、中間型の前駆細胞集団では運命可塑性は見られなかった。従って、脳発生の間には、異なるルールの細胞運命の時間的進行をたどる前駆細胞のサブセットが存在している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1515-6

2

活動銀河核からの9時間の準周期的なX線の爆発的放射

Nature 573 2019年9月19日

銀河GSN 069は、2010年にX線放射で検出された。今回G Miniuttiたちは、2018年12月から始めた54日間の観測で、この銀河が準周期的にX線の爆発的放射を起こしており、それらの放射は9時間ごとに約1時間持続していることを見いだした。この爆発的放射は、X線フラックスを約100倍増大させ、高温状態と低温状態の間の遷移を伴っている。著者たちは、この現象は、質量が太陽の約4 × 105倍のブラックホールで降着の性質が変化することに起因すると主張している。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1556-x

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02652-y

3

スピンによる確率論的コンピューティング

Nature 573 2019年9月19日

従来型のコンピューターは、情報を0と1の2進コードで表すビット列を使って決定論的に動作する。しかし、最適化やサンプリングなど、そのような計算法を使って処理するのが難しい多くのクラスの問題があり、これに代わるコンピューティング方式への関心が高まっている。確率論的コンピューティングはそのような例の1つであり、確率ビット(pビット)を利用することを目指している。pビットは、0と1の間で時間とともにゆらぎ、ニューラルネットワークに着想を得た原理を使って、他のpビットと相互作用する。今回、深見俊輔(東北大学)たちは確率的磁気トンネル接合を使った確率論的コンピューティングを実証し、最適化問題の代表例である整数の因数分解を示している。このスケーラブルなスピントロニクスプラットフォームは、最適化やサンプリングなどの難しい問題を解くのに有望なハードウエアを実現する新たな道になる可能性がある。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02742-x

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1557-9

4

電気を使ってエーテル合成を簡単に

Nature 573 2019年9月19日

現行の方法(Williamson法やHofer–Moest反応)によるエーテル合成は、単純な基質に限定されており、大過剰のアルコール出発物質を必要とする。今回P BaranとD Blackmondたちは、電気化学を用いて、例えば立体障害の大きい複雑なアルコールから、さまざまなジアルキルエーテルを合成できることを示している。今回の方法では、カルボカチオンがin situで形成された後、アルコールに捕捉される。また、カルボカチオンが他の求核剤によって捕捉されると、立体障害性のアルコール、エステル、アミド、フッ化アルキルの生成が可能になる。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1539-y

5

エアロゾル排出量削減に起因する気候ペナルティはない

Nature 573 2019年9月19日

大気中のエアロゾルは、ヒトの健康に有害となり得るが、温室効果ガスの排出に起因する気候温暖化効果の一部を隠すこともできる。気候を寒冷化するエアロゾル粒子の削減につながる大気質政策は、ヒトの健康に有益であるが、気候温暖化の規模と速度を短期的に増大させる可能性があると示唆されている。今回、クリーンエネルギー社会へのより現実的な転換を考慮したモデリングシナリオが提示され、短期的には温暖化の規模と速度が大幅に増大することはなく、エアロゾルの段階的削減の開始から20年以内に温暖化の速度が低下することが見いだされている。この知見は、クリーンエネルギー社会への最も積極的で妥当な転換であっても、基本的に全ての時間スケールで、気候変動の緩和と大気質に有益であることを示唆している。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1554-z

6

最初の蠕虫様動物の最期の歩み

Nature 573 2019年9月19日

カンブリア紀は約5億4000万年前に生命の爆発的な進化で始まったことで知られ、現在生きている動物のほぼ全てのボディープランはこの時に進化したと考えられている。直前のエディアカラ紀にも生物は存在したが、それらは奇妙で、現生のどの生物とも関連付けるのは難しい。果たして、エディアカラ紀にも現代的な姿をした動物は存在したのだろうか。分子的研究からは肯定的な結果が得られているが、化石証拠は乏しく、異論は多い。今回S Xiaoたちは、中国で発見された、エディアカラ紀末期(5億5100万〜5億3900万年前)の細長くて分節した体を持つ蠕虫様動物の化石について報告している。この動物の体の幅は5〜26 mmほどで長さは27 cmに達する。この化石標本は、この動物が移動した際にできた堆積物中の這い跡のちょうど先端にこの動物自体が保存されているという、まさに「死の行進」を捉えたものである。こうした這い跡からは、この動物に運動性が備わっていたことが明らかになるとともに(エディアカラ紀の動物ではこれが必ず議論になる)、この動物は、連続的な這い跡を作る能力を持つことが示されたエディアカラ紀の既知で最古かつ唯一の体化石タクソンであると主張された。この動物はおそらく左右相称動物(ステム群環形動物または汎節足動物)の一種と見られ、こうした生物がカンブリア紀以前に進化したという分子時計からの予測が裏付けられた。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1522-7

7

CAR-T細胞で心筋繊維化を標的化する

Nature 573 2019年9月19日

CAR-T細胞療法は、特異的抗原を認識するように細胞傷害性T細胞を改変した一種の免疫療法であり、いくつかの種類のがんに対して米国食品医薬品局(FDA)の認可が下りている。J Epsteinたちは今回、この種類の免疫療法を心筋繊維化の治療に拡張できるかどうか検討した。マウスの概念実証研究では、FAP(繊維芽細胞活性化タンパク質)抗原を認識するように改変されたCAR-T細胞が、心臓損傷モデルにおいて心筋繊維化を減少させ、心機能を回復できることが示された。この方法を臨床に橋渡しする前に、最適な標的を特定し、安全性リスクを最小限にするために多くの研究を行う必要があると、著者たちは注意を促している。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1546-z

8

SLC19A1は環状ジヌクレオチドの輸送体である

Nature 573 2019年9月19日

環状ジヌクレオチドは細胞内タンパク質STINGに結合して活性化し、その結果、I型インターフェロンや炎症性サイトカインが産生される。このSTING経路は、侵入微生物やがん細胞の除去に重要な役割を果たしているだけでなく、無菌性の炎症や自己免疫にも重要な役割を担っている。今回D Rauletたちは、還元型葉酸の輸送体であるSLC19A1が環状ジヌクレオチドの主要な輸送体であることを明らかにし、cGAMP(DNAセンサーであるcGASが産生したり、がん細胞が分泌したりする)や細菌由来のCDN、合成CDNなどの細胞外CDNが細胞質ゾルへと入り込む仕組みの説明を提案している。この研究は、基礎科学とバイオテクノロジーの両方に意味を持つものだ。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1553-0

9

E-カドヘリンは転移形成に必要である

Nature 573 2019年9月19日

E-カドヘリンは接着分子であり、がん細胞の原発部位からの拡散と転移部位への播種の際には必要ではなく、その喪失は浸潤を促進すると考えられてきた。しかし、A Ewaldたちは今回、乳がんの複数のモデルを用いて、E-カドヘリンはそれでも、TGF-βや有害な活性酸素種、アポトーシスの増加を妨げることによって、転移形成に必要とされることを明らかにしている。従って、E-カドヘリンは生存因子であり、その結果、転移を助けている。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1526-3

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02570-z

10

ヌクレオソームに結合したMLLヒストンメチルトランスフェラーゼの構造

Nature 573 2019年9月19日

MLLファミリーのメチルトランスフェラーゼはヒストンH3のリシン4のメチル化を触媒し、この修飾は主に転写活性化に関連するものである。今回、J Huangたちは、ヒトMLL1とMLL3がそれぞれ、H2Bがモノユビキチン化されたヌクレオソーム、もしくは修飾されていないヌクレオソームと結合した複合体のクライオ(極低温)電子顕微鏡法と生化学解析を報告している。MLL複合体は複数のヌクレオソーム領域と広範囲にわたって相互作用していて、これがH3尾部の効率的な修飾を可能にし、H2BubによるH3K4メチル化のトランスヒストン調節が起こるようになる。MLL1複合体とMLL3複合体の構造的編成の比較によって、各複合体の調節におけるWDR5サブユニットの異なる役割が説明された。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1528-1

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02593-6

「Journal home」に戻る

プライバシーマーク制度