Nature ハイライト

進化学:大きくなり過ぎた生殖器で危機に瀕した貝形虫類

Nature 556, 7701

約7800万年前の貝形虫類<i>Veenia ponderosana</i>の雄。この化石種では、雄の背甲は生殖器の収納のために雌よりも大きくて長い。
約7800万年前の貝形虫類Veenia ponderosanaの雄。この化石種では、雄の背甲は生殖器の収納のために雌よりも大きくて長い。 | 拡大する

Credit: Gene Hunt

性選択と絶滅の関係は、厄介な問題である。というのも、一部の研究は、性選択が自然選択を強化し、種の適応度を高めて絶滅しにくくすると示しているのに対し、他の研究は、性的二型性への投資がリスクを生じ、絶滅の確率を高めると示しているからである。これまでの研究では、「絶滅」が局地的または実験室レベルのものでしかなく、すなわち人為的なものにすぎないという制限があった。では、実際の絶滅を経験した化石記録を利用してはどうだろう。M Fernandes Martinsたちは今回、石灰化した二枚貝様の背甲を有する小型の甲殻類である貝形虫類の極めて良好に管理された化石記録を用いて、この問題に取り組んだ。貝形虫類は、現生種がいるために生物学的な特徴が分かっており、また化石標本は性別を確実に判定することができるため、理想的な研究対象である。雄の背甲は、生殖器を収納するために雌と比べ大きくて長いが、その程度は一定ではない。著者たちがこの貝形虫類の化石記録をたどったところ、性的二型性が絶滅リスクと関係することが明らかになった。二型性がより顕著な種は、そうではない種に比べて絶滅しやすいことが分かったのである。

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