Nature ハイライト

構造生物学:リポ多糖の輸送は「トラップ・アンド・フリップ」機構によっている

Nature 549, 7671

膜二重層を横切る脂質の反転移動は、膜での脂質の非対称性を維持するのに重要だが、これは膜交通やシグナル伝達にも関わっている。この過程はフリッパーゼにより触媒されていて、細菌ではATP結合カセット輸送体がリポ多糖(LPS)を反転移動させる。LPSの輸送は細菌の生存にとって重要であるため、この輸送体は抗生物質開発の標的の1つでもある。今回M Liaoたちは、大腸菌(Escherichia coli)のフリッパーゼMsbAによるLPS認識の構造基盤を示し、LPSの移動経路を明らかにしている。脂質が細菌の膜を横切って移動する際の複数の状態の構造が低温顕微鏡法を使って捉えられ、その1つからMsbAの膜貫通ドメイン中にLPSに当たると考えられる電子密度が検出された。これらの知見から、LPSは輸送体の奥深くに入り込むことで、通常のフリップ・フロップを経ずに移動するという「トラップ・アンド・フリップ」機構が提案されている。

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