鳴鳥は手本となる歌を途切れ途切れに聞いても、それぞれの断片でフレーズが重複していれば、それらをうまく縫い合わせて完全なメロディーに仕立てて覚えることができるという報告がなされている。G J Roseたちは、ミヤマシトドというスズメ目ホオジロ科の鳥の歌を録音して、いくつかのフレーズに分割した。そして、2つのフレーズを本来の順番と同じに並べて1対とし、一部が重なる対を、ひな鳥たちに聞かせた。すると、ひな鳥たちは歌の切れ端を聞いただけで完全な歌を歌えるようになった。しかも、同様の手順で本来の順番と逆に並べたフレーズの対を聞かせたひな鳥たちは、フレーズがまったく逆順に並んだ歌を覚えた。鳴鳥は歌を覚える最初の時期に、手本の歌の長期記憶、いうなれば「鋳型」を作り、その後これを歌学習の手引きとする。今回の新しい行動研究は、鋳型が神経レベルでどういうふうに再提示されるのかを調べている神経科学者たちにとって重要な手がかりとなる。というのも、歌学習の鋳型が必ずしも完全な歌に相当するものでなくてもいいことを暗示する結果となったからだ。「この研究結果は、歌学習機構に関する生理学上の根本的な疑問の解明が今後10年間で大幅に進歩するに違いないことを示している」とD MargoliashがNews and Viewsで述べている。
2004年12月9日号の Nature ハイライト
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