Nature ハイライト

生態:放牧と生物多様性の関係を探る

Nature 508, 7497

人類の活動は、草原に栄養素と放牧を導入することによって草原の生物多様性に影響を与えている。この2つの要因は光量の制限に関して相反する作用を持つため、互いを相殺する可能性があると理論的に予測されている。今回、6つの大陸の40か所の実験場[Nutrient Network(NutNet)共同研究の41か所に由来]で行われた国際共同研究で、その理論が検証された。その結果から、栄養素の追加と植食動物は、一貫して相反する作用を及ぼしており、光量を介して共に植物多様性を制御していることが実証された。つまり、栄養素は地表面に届く光量を減らすことによって植物多様性を低下させ、植食動物は光をめぐる植物間の競争を減らすことによって植物多様性を増大させている。この研究は、放牧活動と窒素蓄積が世界の草原の生物多様性に与える影響を、従来よりも高い精度でモデル化するのを助けると考えられる。もう1つの論文ではY Hautierたちが、NutNetの草原実験場における富栄養化の影響を調べ、肥料の使用は草原の生物多様性にとって脅威となるだけでなく、生物多様性が生態系機能に及ぼす安定化作用の方も脅かすことを明らかにしている。

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