Nature ハイライト

分子生物学:in vivoのRNAストラクチュロームを調べる

Nature 505, 7485

RNAは一本鎖であるため、分子間や分子内での塩基対形成によって多様な二次構造を形成することができる。今回、RNAのin vivoでの構造多様性、動態や機能的影響について詳しく調べた3つの研究結果が報告された。S Assmannたちは、モデル植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の1万を超える転写産物について、in vivo RNA構造のマップを作成した。structure-seq(structure-sequenceの略)と名付けられたこの方法では、in vivoでの試薬(硫酸ジメチル;DMS)を使った検出と次世代塩基配列解読法とを組み合わせて、一塩基レベルの精度でゲノム規模の解析を行える。これによって、コード領域、スプライス部位、ポリアデニル化部位に、それぞれ異なる構造パターンが関連することが明らかになった。今回の結果を従来の手法で得られた結果と比較したところ、一部の遺伝子群に関しては既存技術による予測はかなり正確だったが、それら以外の遺伝子、例えばストレス応答に関わる遺伝子などは、うまく予測ができていなかったことが明らかになった。これは、このような遺伝子がストレス条件にもっと適応するために起こした変化を反映しているらしい。J WeissmanたちもDMS-Seqという方法を開発し、酵母と哺乳類細胞のRNA構造を一塩基レベルの精度でゲノム全体にわたって解析した。こうして得られた知見をin vitroで得られた結果と比較して、細胞内のRNAは予想されていたほど二次構造を形成していないという結論が得られた。細胞内では、熱に対して安定なRNA構造でさえ変性を起こすことがあり、これはRNA構造を調節する細胞過程の重要性をはっきり示している。H Changたちは、また別の問題、つまりトランスクリプトーム全体レベルではRNAの二次構造が血縁者間でどのように変化しているのかという問題について調べた。両親とその子供という組み合わせについてRNA二次構造を調べることにより、転写された一塩基変異体の約15%が、局所的な二次構造に影響を与えることが明らかになった。一部の部位ではこのような「riboSNitch」、つまりRNA構造を変化させる一塩基変異が非常に少なく、そのような部位では特定のRNA構造が重要なのだろうと考えられる。この研究により、RNA構造の変化、特に遺伝的変異によって生じる変化が遺伝子発現を変化させる仕組みについて、研究されていない問題が非常に多いことがはっきりした。

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