Nature ハイライト

医学:H7N9ウイルスの伝播

Nature 501, 7468

A型鳥インフルエンザウイルスH7N9亜型の感染が検査により確定したヒト症例は、2013年7月20日までに134に上り、そのうち死亡例は43である。河岡義裕(東京大学ほか)たちは、最近得られた2つのウイルス分離株についてその生物学的特性を調べ、マウス、ブタ、サル、フェレットへの感染例から得られた多数のデータを報告している。H7N9ウイルスは、パンデミックを引き起こしたH1N1ウイルスに比べてノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性は低かったが、実験段階にあるポリメラーゼ阻害剤に対しては同程度の感受性を示した。一方、T TumpeyたちはH7N9ウイルスの2種の臨床分離株について、病原性と哺乳類間での感染性を調べた。このウイルスは、ヒト気道細胞とフェレットの気道で季節性H3N2ウイルスよりも高レベルにまで増殖し、マウスでの致死性は遺伝的に近縁のH7N9ウイルスやH9N2ウイルスよりも高いことが明らかになった。感染性については、H7N9はフェレットでは、限定的ながら呼吸器飛沫を介して感染することが分かった。また、R Fouchierたちは、H7N9ウイルスのフェレット間での伝播について調べ、空気感染は起こり得るが、効率は低いことを明らかにした。またこのウイルスでは、フェレット間で伝播する間に、鳥受容体への結合能力が高く、より高いpHでの融合が可能で、熱安定性の低いウイルス変異体が選択されることも示され、これらの特徴は伝播能力の低下を引き起こす可能性があるとFouchierたちは考えている。

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