Nature ハイライト

行動進化学:懲罰の段取り

Nature 466, 7308

進化ゲームでの協力行動は、懲罰を与える者がコストを負担して、非協力者に懲罰を加えることによって安定化できる。その形式にはさまざまなものが考えられるが、例として、ただ乗りする者、つまり協力とそれに必要なコストを負担せず利益のみを受ける者に対して個人が事後に懲罰を与えるピア懲罰や、制裁のための準備を事前に整えておくプール懲罰が挙げられる。前者がつまるところ「私的制裁」であるのに対し、後者は懲罰のために警察を設けるようなものである。今回Sigmundたちは、コンピューターモデルを使って、ゲーム自体では協力するが懲罰への寄与は拒否する「二次的ただ乗り」への対処に関しては、ピア懲罰よりもプール懲罰のほうが優れていることを明らかにしている。このモデルは、寄与度を監視して、ただ乗りする者に制裁を与える自治的な機関が自発的に導入される可能性を示している。これには、トップダウン型の指示や計画は不要である。試行錯誤、そして成功例の模倣だけで、私利に従う個人の間に社会的契約が生まれるのだ。

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