Nature ハイライト

細胞:iPS細胞に見られた遺伝学的異常

Nature 471, 7336

体細胞のエピゲノム的な再プログラム化を行って作り出されるiPS(誘導多能性幹)細胞は、治療に有用となる可能性が高く、重要な疾患モデルの基盤にもなると考えられる。だが、iPS細胞の再プログラム化やin vitro培養によって遺伝学的およびエピジェネティックな異常が引き起こされうることが最近報告され、このような異常がiPS細胞の臨床応用に及ぼす影響が懸念されるようになっている。今週号には、ヒトiPS細胞および胚性幹(ES)細胞のゲノミクス研究についての3つの論文が掲載されており、それらの結果を統合してみると、iPS細胞には染色体レベル、染色体領域内レベルおよび一塩基レベルで異常が蓄積していることが確認された。Husseinたちは、iPS細胞株の培養継代回数が少ないものと中程度のものについてコピー数変動を比較し、再プログラム化に関連してコピー数変動のレベルが高くなることを報告している。ただし、通常の長さの培養期間中にiPS細胞は選択を受け、変異はES細胞で見られるのと同程度まで減少する。Goreたちは、5つの方法によって再プログラム化した22株のヒトiPS細胞株でタンパク質をコードする領域内に見られる点突然変異について報告している。その一部は体細胞に元来存在したものだが、その他は再プログラム化に関連する新規な突然変異だった。Listerたちは、ヒトES細胞株、iPS細胞株および体細胞前駆細胞株の全ゲノムDNAメチル化プロファイリングを用いて、iPS細胞ゲノムで異常な再プログラム化を受ける「ホットスポット」を明らかにしている。

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