Nature ハイライト

環境:消えゆく両生類

Nature 455, 7217

この20年間に、世界各地で両生類の個体数減少が報告されてきている。この現象の原因については、生息地の減少、気候変動、病害などさまざまなものが挙げられてきたが、十分な根拠がない場合が多かった。今回、米国ミネソタ州の湿地で行われたヒョウガエル(Rana pipiens)の事例研究で、農業用化学物質の使用が寄生虫蔓延と結びついて、個体数減少の一因となる可能性が示された。この研究では、カエル体内の吸虫の幼生の数と関連する因子が探索された。この寄生虫が多数存在すると、個体は衰弱し、四肢の形成異常や腎障害を来して、死に至る場合もある。吸虫感染を予測する指標となりそうな240種類以上の因子(各種動植物の存在から農業用化学物質や生息地の地理的条件まで)の中から、除草剤のアトラジンと肥料のリン酸塩の2つが浮かび上がった。アトラジンとリン酸塩は、トウモロコシやソルガムの生産に使用される主要な農業用化学物質であり、両者を合わせると吸虫数の変動の74%が説明できた。

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