Nature ハイライト
Cover Story:異種皮質移植:マウスの大脳皮質をヒト幹細胞由来オルガノイドで置き換えて神経疾患をモデル化する
Nature 658, 8135
S. Pasca lab, Stanford University
ヒトの脳がどのように発生・発達し、機能するかを研究することは難しい。その大きな理由の1つは、当然のことながら、生きたヒト脳組織へのアクセスが限られていることにある。ヒトの幹細胞から作られるモデルであるヒト脳オルガノイドは、生きた神経細胞を研究する手段を提供することで、その価値を示してきた。しかし、これらのモデルには依然として限界があり、一般に他の脳構造とは統合されておらず、神経回路レベルや行動面での影響について得られる知見も限られている。今週号ではS Pașcaたちが、こうした限界の一部を克服するために設計した実験モデルを報告している。研究チームは、大脳皮質と海馬の大部分を欠くマウスを作製する遺伝学的戦略を開発し、それによって生じた空間にヒト大脳皮質オルガノイドを移植して、「異種皮質マウス」を作製した。移植されたオルガノイドは大きく成長し、多様なヒト神経細胞タイプへと分化するとともに、宿主の脳と統合される神経回路を形成した。著者たちはまた、このモデルを用いて行動のいくつかの側面を評価し、神経系の損傷による影響を調べることもできた。彼らは、このモデルがヒトの神経発生・発達の研究や、神経疾患および精神疾患の研究、治療介入の研究にも役立つ可能性があるとしている。この研究は、広範な倫理的監督の下で行われたもので、研究チームは、この分野でこうしたモデルの科学的、医学的、社会的、倫理的な意味合いを検討するに当たり、適切な指針を策定することの重要性を強調している。
2026年10月8日号の Nature ハイライト
化学:超重元素の結合を弱める相対論的効果を観測
光物理学:2つのレーザー光に自己整合するチップ上の周波数コム
トポロジカル物理学:メタマテリアルで探る臨界転移のトポロジカル効果
ロボット工学:1回の充電でフルマラソンを完走できる4足ロボット
材料科学:2種類の前駆体で炭窒化ホウ素を大面積成長
高分子:水面上で積層させる有機ファンデルワールスヘテロ構造
二次元材料:二次元半導体の核形成位置の制御
有機化学:チアントレニウムイリドを用いた汎用的なカルベン転移
植物生態学:CO2濃度上昇はC4イネ科植物の生産を促進する
神経回路:脳の広範な同期を通じて睡眠を誘う皮質ニューロン
微生物学:ファージは広範なリン酸化によって細菌の防御系を抑える
老化:貯蔵タンパク質Lsp2は栄養素と寿命を結び付ける
腫瘍免疫学:所属リンパ節で抗腫瘍免疫抑制が起こる仕組み
がん免疫療法:CAR-T細胞の抗腫瘍活性を高める探索基盤
免疫学:健康な細胞には取り込まれないカスパーゼ阻害剤の開発
計算生物学:参照配列なしで単一細胞の配列情報を探る
分子生物学:染色体外DNAの維持機構と治療に利用できる脆弱性
分子生物学:生体ゲノムを改変せずに遺伝暗号を試作する
構造生物学:受容体の二量体化を安定させる分子接着剤を設計

