神経科学:マウスにおけるヒト幹細胞由来オルガノイドを用いた発生・発達的な異種皮質形成
Nature 658, 8135 doi: 10.1038/s41586-026-11032-2
ヒトの脳組織にアクセスできないことが、ヒト脳の発生・発達や機能の研究を制限しており、ヒト幹細胞由来の神経モデルを用いてこの課題への取り組みが始まっている。神経オルガノイドを齧歯類宿主に移植することで、ヒトの神経発生・発達および回路機能の複数の側面を、宿主動物の行動表現型解析と並行して、in vivoで研究することが可能になる。しかし、空間的な制約や宿主の神経回路との競合により、疾患の研究に非常に重要な、神経オルガノイドの統合が制限されている。今回我々は、遺伝学的戦略を用いてマウスの新皮質と海馬からグルタミン酸作動性ニューロンを効果的に除去し(無外套状態)、生じた皮質空間に、新生仔期にヒト幹細胞由来の大脳皮質オルガノイド(hCO)を移植して異種皮質マウスを作製する、移植プラットフォームを確立した。移植片はロバストに成長し、hCOが大脳皮質容積の大部分を占めるようになって、第5層の終脳外投射ニューロンを含む、多様なヒト大脳皮質細胞タイプが生じた。ヒトの皮質ニューロンはマウスの神経系と統合され、in vivoでの皮質移植片全体のカルシウム画像化と電気生理学的解析から、発生・発達中の神経回路に類似した、組織化された活動のパターンが明らかになった。無外套マウスおよび異種皮質マウスの行動解析からは、ロコモーションが全般的に保たれている一方で、四肢の協調には選択的な差異があり、自発行動の組織化も変化していることが明らかになった。さらに、このプラットフォームによって、発生・発達中のヒト大脳皮質細胞に対する損傷のモデルで行動の読み出しが可能になった。我々は、異種皮質形成(xenocortication)が、神経の発生・発達の研究、疾患のモデル化、治療法の開発のために、ヒトのニューロンを用いて回路レベルおよび行動レベルの読み出しを得るのに役立つと考える。

