Nature ハイライト

Cover Story:心臓の問題:被嚢類の進化に光を当てる心臓発生モジュールの解体

Nature 599, 7885

ホヤなどの被嚢類(尾索動物)は、脊椎動物に最も近縁な動物群である。被嚢類の大半は、幼生時は自由遊泳性だが成体になると固着性に(自力で動けなく)なる。しかし、オタマボヤ類はこの変態をせず、一生を通して自由に遊泳する。被嚢類の固着性の起源や、これがオタマボヤ類とどのように関連しているかは、多くの議論を呼んでいる。今回C Cañestroたちは、被嚢類の進化に関する新たな見方を提案している。彼らはオタマボヤ類の心臓の発生に着目し、この動物の心臓咽頭遺伝子調節ネットワークが大規模な遺伝子の喪失によって「解体」されていることを見いだした。著者たちはこの解体が、祖先的な被嚢類に存在した固着性の生活様式を特徴付ける特性の喪失に寄与していたと示唆している。この解体はまた、表紙に示すような、オタマボヤ類を特徴付けるゼリー状の濾過装置「ハウス(包巣)」など、この生物群の固着性の生活様式からの移行を助けた進化的適応とも関連付けられた。

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