Nature ハイライト

創薬:BAMを標的として病原菌を殺す

Nature 576, 7787

薬剤抵抗性のグラム陰性病原菌は、ほとんどの薬剤を通過させない不浸透性の外膜を持つため、手に負えない難題となっている。K Lewisたちは今回、グラム陰性細菌を標的とする新たな抗生物質の特定と、その特性解析について報告している。この抗生物質は、線虫共生細菌の生合成遺伝子クラスターのスクリーニングから発見された。生化学的特性解析では、2つの珍しい大環状架橋を持つ修飾されたヘプタペプチドであることが明らかになり、ダロバクチン(darobactin)と命名された。ダロバクチンは殺菌性の化合物であり、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌や、カルバペネム抵抗性臨床分離株などの多剤耐性病原菌に対するin vitro活性を持つ。ダロバクチンは、敗血症マウスモデルにおいて有望な薬物動態を示し、感染に対する完全な保護効果を示した。顕微鏡観察、トランスクリプトーム、プロテオームのデータは、ダロバクチンが外膜の生合成を阻害することを示唆し、耐性変異は、BAM複合体の外膜シャペロンであるBamAにマッピングされた。タンパク質のたたみ直しアッセイと等温滴定熱量測定実験の組み合わせから、BamAが実際にダロバクチンの標的であることが示唆されたが、その殺傷機構を明らかにするには、さらなる研究が必要である。

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