Nature ハイライト

進化学:中耳進化の異なる道筋

Nature 576, 7785

今回発見された前期白亜紀の多丘歯類<i>Jeholbaatar kielanae</i>の復元想像図。背景には同時期に生息した原鳥類恐竜ミクロラプトルが描かれている。
今回発見された前期白亜紀の多丘歯類Jeholbaatar kielanaeの復元想像図。背景には同時期に生息した原鳥類恐竜ミクロラプトルが描かれている。 | 拡大する

Credit: Yong XU of IVPP

多丘歯類は、おそらくこれまでで最も繁栄した哺乳類の一群であったと考えられる。中生代の前半に進化を遂げた多丘歯類は白亜紀末の大量絶滅を乗り越え、始新世まで生き延びた。その名称が示すように特徴的な歯を有していた多丘歯類は、多くの点で齧歯類の先駆けとも言える存在だった。今回Y Wangたちが新たに発見したJeholbaatar kielanaeは、現在の中国で約1億2000万年前に生息していた多丘歯類であり、その標本には多くの構造、中でも中耳が極めて詳細に保存されている。哺乳類の進化は、祖先的爬虫類の下顎から多くの骨要素が頭蓋へとゆっくり移動して中耳の小骨を形成したことを特徴とする。これまで、この進化は独立して複数回起こったと考えられてきたが、それはJ. kielanaeにも当てはまるようである。著者たちは、哺乳類進化における顎の歯骨後方の骨の耳小骨への変化は、多丘歯類などの哺乳類系統において咀嚼機構が複雑さを増していったことと関係している可能性があると示唆している。

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