Abstract

キタエフ量子スピン液体のコンセプトと実現

Nature Reviews Physics

2019年3月25日

Concept and realization of Kitaev quantum spin liquids

キタエフ量子スピン液体のコンセプトと実現
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キタエフ模型は、2Dハニカム格子におけるS = 1/2 スピン模型であり、厳密に解くことができる。キタエフ模型では、スピンが分数化してマヨラナフェルミオンになり、基底状態においてトポロジカル量子スピン液体(QSL)が形成される。α-RuCl3や数種のイリジウム複合酸化物は、ハニカム構造の磁性絶縁体で、そうした物質では、電子相関とスピン軌道結合の相互作用によってキタエフ模型の必須要素が現れる可能性があると指摘された。このため、キタエフQSLを実現しマヨラナフェルミオンの特徴を検出する競争が始まった。我々は、キタエフQSL基底状態の理論的背景と、スピンと軌道がエンタングルしたJeff = 1/2モーメントを用いたキタエフQSL基底状態の実現についてまとめる。また、Na2IrO3、α-Li2IrO3、β-Li2IrO3、γ-Li2IrO3、α-RuCl3、H3LiIr2O6などの候補物質とその電子的特性および磁気的特性について概説する。最後に、印加磁場中のH3LiIr2O6とα-RuCl3がQSL状態の特徴を示すことと、α-RuCl3がスピン分数化と一致する異常な磁気励起と熱輸送特性を示すことを明らかにした実験について論じる。

Hidenori Takagi, Tomohiro Takayama, George Jackeli, Giniyat Khaliullin and Stephen E. Nagler

Corresponding Author

高木英典
マックス・プランク固体物理学研究所、シュトゥットガルト大学、東京大学大学院理学系研究科

高山知弘
マックス・プランク固体物理学研究所、シュトゥットガルト大学

George Jackeli
マックス・プランク固体物理学研究所、シュトゥットガルト大学

Stephen E. Nagler
Neutron Scattering Division, Oak Ridge National Laboratory

doi:10.1038/s42254-019-0038-2

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