Research Highlights

RA拡大の犯人と特定されたRASF

Nature Reviews Rheumatology

2010年1月1日

Rheumatoid arthritis RASFs identified as culprits in the spread of RA

関節リウマチ(RA)は、通常は1つの関節で発症し、その後全身のほぼすべての関節に広がっていくことが知られているが、疾患拡大に関与する細胞または分子はこれまで確認されていない。Nature Medicine 誌の報告によると、非難の矛先はRA滑膜線維芽細胞(RASF)に向けられているようである。

RASFはマトリックス破壊酵素の産生細胞として関節軟骨破壊をもたらし、in vitroで軟骨や骨に付着、浸潤し、これらを破壊することが明らかになっている。In vivoでRASFが遊走し、疾患を拡大させるかどうかを検討するため、Justus Liebig University Giessen(ドイツ)の研究者らはRAの重症複合免疫不全(SCID)マウスモデルを用いて、この細胞の動きを調べた。このマウスは液性および細胞性免疫応答が欠如しているため、完全なRA発症過程を調べることは難しいが、異種移植片の拒絶がないため長期間にわたり移植片や細胞の運命を検討することができる。

健常なヒト軟骨から採取した軟骨・スポンジ複合体をSCIDマウスの皮下に埋め込み、片側のインプラントにはヒトRASFを充填し(一次インプラント)、反対側(対側側腹部)には充填しなかった。ヒト由来のRASFは一次インプラントの軟骨に浸潤しこれを破壊するだけでなく、対側側腹部にも遊走し、軟骨浸潤と破壊を引き起こす。対照として、RASFの代わりに変形性関節症の滑膜線維芽細胞を充填した一次インプラントを用いたところ、浸潤はほとんど、またはまったく認められなかった。

このように、RASFは一次インプラントから対側の健常関節に遊走すると思われるが、その移動はどのような経路で行われているのであろうか。この疑問に答えるため、著者らは埋め込み後60日が経過したマウス20匹の内部臓器を調べた。すべてのマウスでRASFが認められた臓器は脾臓のみであり、RASFが血流を介し遠隔軟骨部位に遊走することが示唆された。

本試験の研究責任者であるDr. Elena Neumannは「RASFには血流を介して長距離を遊走する能力があるという革新的な知見が得られた。組織から出て血流を介し別の部位へ遊走し、マトリックス破壊行動を生体内の健常部位へと移行させていくという点が新しい。」と述べている。

この研究は、できるとすれば、将来どのように臨床応用できるであろうか。「今回の研究の目標は、RASFの遊出と長距離移動を阻害することである。RASFの遊走能を抑制できれば、関節内の健常部位のみならず、RA患者の健常関節も保護することができると期待される。」とNeumannは結論づけている。

doi:10.1038/nrrheum.2009.246

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度