Research Highlights

p27の裏の顔

Nature Reviews Cancer

2007年9月1日

腫瘍抑制因子p27(CDKN1Bがコードする)には、細胞周期阻害因子としての役割以外の機能があることを示す証拠が、いくつか見つかっている。J RobertsとA Bessonらは現在、p27が意外にも、in vivoで優性癌タンパク質として挙動しうることを明らかにしている。

RobertsとBessonらは、細胞周期調節活性とは別のp27の機能を検討すべく、変異型p27(p27CK−)が発現するノックインマウスを作製した。この変異型では、4つのアミノ酸置換により、サイクリン-サイクリン依存性キナーゼ(CDK)複合体と結合してこれを阻害する能力が損なわれている。p27ヌルマウスと同様、p27CK−/CK−マウスは体が大きく、臓器も巨大であるが、この特徴は細胞周期調節におけるp27の重要性をよく示している。しかし、下垂体腫瘍のみを生じたp27ヌルマウスとは対照的に、p27CK−/CK−マウス(遺伝的背景が異なる2系統)は、複数の組織の増殖性病変および自然発生腫瘍の発生率が高かった。変異マウスのほとんどに生じた下垂体腫瘍は、以前にp27ヌルマウスに認められたものよりも大きくて血管密度および悪性度が高く、早期死亡をもたらした。

p27+/CK−ヘテロ接合体マウスに増殖性病変および腫瘍性病変が発生している(ただし、p27 CK−/CK−ホモ接合体マウスと比べれば遅発)ことを考えれば、変異型p27CK−の発癌作用は優性遺伝であり、p27+/CK−マウスの肺腫瘍8検体の遺伝子型から、野生型対立遺伝子におけるヘテロ接合性の喪失は明らかにならなかった。

では、p27CK−に発癌性があるのはなぜだろうか。興味深いことに、変異型p27CK−は網膜前駆細胞の異常増殖によって網膜異形成を引き起こし、さらには肺異形成から腫瘍発生への進行にかかわる、年齢に依存した気管支肺胞幹細胞プールの増大を誘発した。以上のデータから、p27の発癌機能は幹細胞および前駆細胞の不適切な増殖に関連していることがわかる。

RobertsとBessonらは、p27の機能をin vivoで分析することによって、p27の予期せぬ新たな発癌活性を明らかにした。この発癌活性は、CDKの阻害とは無関係と思われ、細胞質活性のほか、核活性も必要とするようである。(変異またはサイレンシングによる)CDKN1Bのホモ接合型不活化がヒト腫瘍に極めてまれである理由は、ここにあるのではないだろうか。

doi:10.1038/nrc2216

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