Research Highlights

途方もない捜索

Nature Reviews Cancer

2008年9月1日

Finding the needle in the haystack

がんバイオマーカーの探索は、開始以来、治療効果の高い早期でのがんの発見やそれに続いて実施される治療によって、がんによる死亡を減らすことを目指して行われてきた。この分野はプロテオミクスに基づく方法が主流となって研究されてきたが、実現にはいまだ至らず、新たな戦略が急務となっている。このほど、Muneesh Tewariらは、血清または血漿におけるマイクロRNA(miRNA)の検出が、がんを発見する効果的な戦略となりうることを明らかにした。

Tewariらはまず、内因性miRNAが血漿中に検出されることを確認した。健常被験者の血漿から単離した総RNAを放射性同位元素で標識し、PAGEを行った後、転写酵素PCRを実施し、cDNAの配列を決定した。これにより、見つかった約22ヌクレオチドの短いRNAの大半が、既知のmiRNAに対応していることが明らかになった。しかも、内因性miRNA3種(miR-15bmiR-16miR-24)の値は凍結-解凍を繰り返しても一定しており、バイオマーカー候補に求められる安定性を示した。

次に必要なのは、腫瘍由来のmiRNAを血漿中から検出できることを示すことである。Tewariらは、マウスにヒト前立腺がんを異種移植し、28日後に血漿からRNAを単離した。TaqMan定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を実施したところ、ヒト前立腺がんを移植したマウスでは、miR-629*およびmiR-660の2つのmiRNAが検出されたが、がんを移植しなかった対照マウスでは検出されなかった。いずれのmiRNAもマウスにおけるホモログがないことから、これらはヒト前立腺がん特異的な腫瘍由来マーカーであると考えられた。さらに重要なことに、そのレベルが腫瘍量と相関しており、この方法の妥当性が裏付けられた。

この方法はヒトでも有効なのだろうか。Tewariらは、既報の前立腺がんのmiRNA発現プロファイルに基づき、推定されるmiRNAバイオマーカー6種のパネルを作成し、TaqMan qRT-PCRを用いて、これらのmiRNAの血清値を転移性前立腺がん患者と健常被験者との間で比較した。このうちの1つ、miR-141は、前立腺がんグループで顕著な発現がみられ(46倍)、健常者と前立腺がん患者の血清を高感度で特異的に識別することができた。以上より、これらのデータは、血中がんバイオマーカーとして血液中を循環しているmiRNAの研究を後押しするもので、前立腺がんの早期発見の手段としてmiR-141が有望であることを示唆している。

doi:10.1038/nrc2474

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