Research Highlights

マイクロRNAは分化を促す

Nature Reviews Cancer

2008年4月4日

MicroRNAs promote differentiation

幹細胞が分化を開始するプロセスを正しく制御することは、正常な発生およびがんの回避に極めて重要である。最近報告された2つの論文では、分化への移行中における特定のマイクロRNA(miRNA)の重要性が示されている。

miRNAは皮膚細胞の分化に関与することが知られているため、2つの論文うちの1報の筆者であるR Yiらは、さまざまな発生段階にあるマウスの皮膚からmiRNAライブラリを構築した。その中で特に注目すべきは、E13.5ではほとんど発現していなかったmiRNA miR-203が、E15.5では最も多いmiRNAの1つであったことである。さらに、分化した基底上細胞での発現量が、未分化の基底細胞の25倍に上ることがわかった。そこで、YiらはmiR-203を用いて研究を進めた。

上皮幹細胞でのmiR-203発現が早期に活性化されたトランスジェニックマウスでは、上皮厚の減少など、さまざまな表現型がみられた。しかもその上皮幹細胞は、増殖能が低かった。興味深いことに、これらの表現型はp63欠失上皮(p63は幹細胞の維持に不可欠な調節因子)にみられる上皮幹細胞の枯渇に似ており、miR-203が過剰発現する角質細胞ではp63レベルが低下していた。逆に、miR拮抗因子を用いてmiR-203の発現をノックダウンすると、分化上皮細胞の増殖能が高まり、p63レベルが上昇することがわかった。バイオインフォマティクス試験によりTP63 mRNAの3’UTRにmiR-203のターゲット部位が2カ所あることが明らかになり、この部位を変異させるとmiR-203を介したp63抑制がきかなくなった。これらのことからYiらは、TP63miR-203の唯一の標的ではないが、miR-203は、基底上細胞においてTP63をはじめとする基礎遺伝子の発現を抑制し、それによって「幹細胞らしさ」の負の調節因子として作用していると示唆した。

もう1報の論文では、S R Viswanathanらが、胚性幹(ES)細胞および一部のがん細胞で下方制御されるlet-7g miRNAの発現を調べた。ES細胞では、成熟したmiRNAは検出されないが、未処理のプライマリlet-7g(pri-let-7g)は発生段階の後期でのレベルと同じくらい存在している。そこで、Viswanathanらは生化学的方法を用いてlet-7g発現を転写後に阻害する因子を探索し、ES細胞および胎児性がん(EC)細胞ではpre-let-7gと共精製されるが分化細胞では共精製されないタンパク質を発見した。このアミノ酸配列を決定したところ、RNA結合タンパク質LIN-28が有力候補として特定された。さらにin vitroアッセイにより、LIN-28よりlet-7gプロセシングが阻害されることがわかった。

Gregoryらは次に、内因性のLIN-28がない細胞系にpri-miRNAおよびLin-28 cDNAを導入し、このプロセシング阻害がin vivoでも起こることを確認した。また逆に、RNAiを用いてEC細胞およびES細胞の内因性LIN-28をノックダウンすると、let-7ファミリーの全メンバーは上方制御されたが、ほかのmiRNAはいずれも上方制御されなかった。これによりLIN-28がlet-7の特異的な阻害因子であることがわかった。興味深いのは、LIN-28類似体のLIN-28Bがいくつかのがんで過剰発現していることで、Viswanathanらは、LIN-28Bもlet-7プロセシングを阻害することを示した。

上記2報より、幹細胞の分化で2種類のmiRNAの機能が示唆された。これらのmiRNAは、多くの遺伝子の発現を迅速に下方制御し、遺伝子発現の協調的変化が必要な過程において重要な役割を果たしていると考えられる。

doi:10.1038/nrc2357

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