Research Highlights

むだになる?

Nature Reviews Cancer

2003年7月1日

インターロイキン‐2(IL-2)は非特異的な腫瘍細胞破壊作用を誘導する能力をもつことから、悪性黒色腫と腎細胞癌の両方の治療に使われてきた。ところが、高用量のIL-2が全身毒性をもたらすためこの治療に対する期待はついえていた。この治療を受けた患者の65%は、血管の浸透性が増す毛細血管漏出症候群を発症し、治療を中止しなければならないのである。IL-2のどの部分が血管内皮細胞の間にある細孔の栓を取り去り、血管内液を血管外の空隙に排出させる原因になるのだろうか。

psteinらは、一連の重複または連続したヒトIL-2ペプチドを作製し、ヒトリンパ腫細胞の表面にあるHLA-DR10抗原を認識するモノクローナル抗体Lym1に連結した。そしてRajiヒトリンパ腫細胞を異種移植したヌードマウスに種々の抗体連結ペプチドを静脈内注射し、その2時間後にトレーサーとして放射性標識Lym1抗体を静脈内注射した。抗体連結ペプチドそれぞれの血管浸透性に対する影響の指標として、72時間後にトレーサー抗体の生体内分布を解析した。その結果、IL-2の22位から58位のアミノ酸を含有する抗体連結ペプチドが、抗体を連結した完全長のIL-2と同程度に腫瘍へのトレーサー抗体の取込みを促進することがわかった。それゆえEpsteinらは、このペプチドを浸透性促進ペプチド(permeability- enhancing peptide, PEP)と命名した。IL-2のPEP領域はIL-2分子の受容体結合部位と部分的に重複しているので、EpsteinらはPEP領域のサイトカイン活性を調べた。しかしPEP領域はIL-2依存性HT-2細胞の増殖を誘導することはできなかった。

のようにEpsteinらは、IL-2のサイトカイン活性を血管系に及ぼす影響から引き離した。これを参考にして、サイトカイン機能を保持するが血管浸透性誘導作用を欠く遺伝的修飾型IL-2を得られれば、高用量IL-2の全身投与療法の開発を断念すべきではないかもしれない。Epsteinらはこの趣旨で実験を重ね、IL-2の38位のアミノ酸の点変異(この部位は22位から58位のアミノ酸からなるPEP領域の中にある)が血管浸透性誘導作用を完全に阻止するが、サイトカイン活性には影響しないことを明らかにした。逆にいえば、腫瘍を標的攻撃する抗体‐PEP融合タンパク質による前処置が腫瘍への薬剤送達を促進する戦略として開発されつつあり、効き目がある高用量の化学療法剤を投与しても全身性副作用を生じることなく腫瘍を標的攻撃することができる。

doi:10.1038/nrc1130

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