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安全性を高めた魔法の弾丸

Nature Reviews Cancer

2003年4月1日

実験的癌治療法を受けている患者を衰弱させる副作用を回避させうる方法が発見された。抗体に結合させた天然毒素(免疫毒素という)は、癌に有効な標的攻撃型治療法に利用できる見込みがある。しかし今日まで、免疫毒素のいくつかはヒトに適用すると血管漏出症候群(VLS)という致死的な副作用があり、問題になっていた。

ature Biotechnology誌の4月号(NBTのホームページにリンク)に掲載された論文によると、テキサス・サウスウェスタン大学メディカルセンターの研究者たちがリシン(ricin)という毒素を単離して重要ないくつかのアミノ酸残基を修飾し、 マウスでの腫瘍細胞破壊力を損なうことなく重篤な副作用を引き起こす能力を除去した。

シンは、ヒマ(トウゴマ)の種子に見いだされる天然毒素である。リンパ腫を標的とする抗体に結合させたリシン毒素A鎖(RTA)が臨床試験で調べられていたが、VLS がこの治療法の有効性を制限していた。VLSを最小限におさえて免疫毒素の安全な投与量を上げられれば、この治療法の成績がかなり改善されるはずである。

の副作用をなくすため、Ellen Vitettaらはまず、VLSを引き起こす数種のタンパク質を調べ、これらが類似のアミノ酸配列を含むことを見いだした。次にVitettaらは、 RTAをもとにして作製した免疫毒素に改変処理を施し、これらの配列を変化させた。そしてマウスのVLSモデルを利用し、この修飾したRTAをもつ免疫毒素が腫瘍細胞を破壊するが、誘導されるVLSは非修飾免疫毒素を投与した場合よりもかなりおさえられることを示した。修飾した免疫毒素の毒性は、約1/5 に減少していた。VLSを引き起こす可能性のある治療法はいくつかあるので、この副作用の問題の解決策が示されたことで、医療現場で使うほかの薬剤の開発も促進されるかもしれない。

doi:10.1038/fake863

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