Research Highlights

複数の任務を帯びたc-MYC

Nature Reviews Cancer

2002年11月1日

c-MYCは、細胞増殖や細胞の成長の促進に不可欠な役割をもつだけではない。John Cleveland、Troy BaudinoらがGenes and Development誌に今回報告している ように、血管新生の鍵となる調節因子としても作用している。

管新生は腫瘍の進行の初期に誘発され、それには胚形成過程の血管形成の誘導にお いても決定的な役割をになう複数の因子が関与する。Baudinoらは、

yc-/-の胚で血管新生過程を解析し、血管形成の誘導と血管新生 が著しく損なわれていることを観察した。さらに、Myc-/-胚幹 (ES)細胞を移入したScid(重症複合免疫不全症)マウスでは、腫瘍の大き さが急激に減少したことから、c-Mycが欠失すると腫瘍形成能力が妨げられる ことが示唆された。そして実際、これらのマウスの腫瘍には新生血管の形成もほとん ど見られなかった。

-Myc遺伝子欠損表現型は、血管内皮細胞増殖因子(Vegf)やVegf受容体のFlk-1を欠 損したマウスの表現型に似ているので、Baudinoらは、彼らのマウスモデルのVegf発 現を調べてみた。Myc-/-ES細胞とMyc-/-卵黄 嚢(のう)内皮細胞では、Vegfの発現量が減少していた。細胞にVegfを導入した場合、 Myc-/-卵黄嚢内皮細胞の増殖機能の欠陥は十分に回復したが、 Myc-/-前駆細胞の腫瘍形成性の欠損は回復しなかったので、 c-Mycには腫瘍形成および血管新生への切換えに関与する標的がほかにもあるにちが いない。実際、Myc-/-ES細胞では、Vegfの過剰発現があってもな くてもTSP-1およびANG-1という血管新生促進因子の発現量が上昇していたが、ANG-2 の発現は抑制されていた。

れらの知見から、なぜ癌にはMYCの活性化がそれほどふつうに見られるのかが説明 される。MYCが活性化されると、腫瘍の増殖と生存がかなり有利になり、腫瘍は血管 新生の欠如によって賦課される数々の制限に打ち勝って増殖するからだ。 c-MYCがほかの血管新生促進因子の調節に果たす役割、および血管新生を抑制する治 療法のためにc-MYCの機能を破壊したときの影響を調べることが、現在重要な研究目 標である。

doi:10.1038/nrc937

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