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ポテトチップスやパンに含まれ発癌性もつ可能性があるとされる物質は、高温加熱時に生じる。

Nature Reviews Cancer

2002年10月1日

動物に癌の症状を引き起こすアクリルアミドという化合物は、油で揚げたり焼いたり したときに生じることが、今回、2つの研究で明らかにされた。

の発見により、公的機関による警告を引き起こした謎が解明されることになる。4 月にスウェーデンの研究グループが、この化合物は生(なま)の食品には含まれてい ないが、ポテトチップスや小型パンには世界保健機関(WHO)が飲料水に推奨する濃 度より多量に含まれていることを見いだした1。

何年も研究を続けてきたが、これほど関心をもった課題はなかった」と、英国レディ ング大学で食品化学を研究するDon Mottramは語っている。その化学物質が何から生 じているかがわからないのは、「非常に大きな問題」だったとMottramは説明してい る。

いたパンがパン生地より美味で、油で揚げたポテトチップスがゆでたジャガイモよ りもおいしいのは、メイラード反応(Maillard reaction)のおかげだ。素材に糖が 含まれていれば、高温でタンパク質が分解されて食品の風味が増し、こんがりしたキ ツネ色になる。

イラード反応によってアクリルアミドも生じることを、Mottramおよびネスレ・リ サーチセンター(スイス、ローザンヌ)のRichard Stadlerが、それぞれ独自の実験 で発見した2, 3。ジャガイモや一部の穀物はアスパラギンというアミノ 酸を多量に含むが、このアスパラギンはアクリルアミドによく似ている。実験室で、 アスパラギンを糖とともに185℃で加熱すると、アスパラギンの多くがアクリルアミ ドに変換されることをMottramとStadlerは見いだしたのである。

調理中は、複雑な化学反応がたくさん起こっている」とStadlerは言う。すなわち、 ほかのアミノ酸も、何度か変換されてアクリルアミドを生じる。アクリルアミドが生 じるしくみを知り、調理法の違いによる影響を理解するため、種々の食品で実験を重 ねることが必要だ、とStadlerは述べている。

いポテトチップスをつくるときのように、食品をもっと高温にさらすと、さらに多 量のアクリルアミドが生成される。高温での加熱時間を長くした場合も同様だ。ゆで た食品からはこれまでにアクリルアミドは検出されていない。これはたぶん、調理す る温度が比較的低いためだろう。

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ットやショウジョウバエの場合、アクリルアミドはふつうの飼料に含まれる濃度 の1000倍の高濃度で癌性の変化を引き起こす。アクリルアミドがヒトにも類似の影響 をおよぼすという直接の証拠はないにもかかわらず、国際癌研究機関は1994年にアク リルアミドを「たぶん発癌性あり」として分類した4。

ットは、加熱した食品を食べない。ヒトは、何千年も前から加熱食品を食べてきた ので、アクリルアミドに対してラットよりも耐性なのではないか、とMottramは言っ ている。肥満、糖尿病、そして欧米の食事に果物と野菜が少ないことのほうがアクリ ルアミドよりも重大な健康上の脅威だ、とMottramはつけ加えている。

クリルアミドの生成機構を突き止めたことは重要だが、これは「必要だが欠けてい るたくさんの事柄の中のほんの1つ」にすぎない、とWHOの食品安全性計画の責任者で あるJorgen Schleudtは述べている。Schleudtは、アクリルアミドがヒトにおよぼす 影響をもっと研究するよう呼びかけている。

は、次週に国連のFAO(食料農業機関)とWHOが、統合的にアクリルアミド研究を行 う関連組織をウェブで展開し始めることになっている。この研究網は「世界的規模の 情報交換」を促進するだろう、とSchleudtは説明している。

doi:10.1038/fake856

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