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侵略的増殖る

Nature Reviews Cancer

2002年9月1日

侵襲性増殖は、腫瘍部位から新しい部位への細胞の移動を伴う複雑な生物学的過程で ある。この過程は転移、つまり二次腫瘍の発生に必要不可欠である。以前の研究では、 この細胞の移動はMet癌遺伝子の活性により誘導できると示されている。侵襲性増殖 の最終段階には新しい場所で分化した細胞が枝分かれのある形態を形成するが、これ は、正常に見られる軸索を誘導する過程に似ていることがわかっている。Silvio Giordanoらが最近、Nature Cell Biology誌に発表した研究は、軸索誘導にか かわる信号がMetの活性を調節できることを示し、軸索誘導と侵襲性増殖の間のつな がりを強調している。

マフォリンは、セマフォリン受容体を介して軸索誘導を調節する水溶性信号物質で ある。Giordanoらは、上皮細胞におけるセマフォリン4Dの発現が侵襲性増殖を引き起 こすことを示した。目を引くのは、内因性のセマフォリン4D受容体であるプレキシン がMetに直接結合する点である。このセマフォリン4Dとプレキシン受容体の結合が、 Metのリン酸化につながる。

襲性増殖とセマフォリンで誘導される過程は生理学的に似ていることがわかってい るが、この新しい研究では、癌遺伝子の活性化に必要と思われる過程において、セマ フォリンと既知の癌遺伝子を直接関連づけている。しかしこの研究はまだ、セマフォ リン4Dの役割が癌の発生に関係しているのかどうかを決定する必要がある。

doi:10.1038/fake855

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