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Nature Reviews Cancer

2002年9月1日

トラスツズマブ(trastuzumab:ハーセプチン)はERBB2受容体を標的とした単クロー ン抗体であり、乳癌患者の治療に大きな成果を上げている。とはいえ、この成果はもっ と改善できるだろうか。Mark SliwkowskiらがCancer Cellの8月号に報告した ところによると、まさにそれが可能かもしれない新しい抗体が開発された。

ラスツズマブの限界は、それがERBB2を過剰発現している女性癌患者にしか 効果がないことだが、ほかの癌でもその経路は活性化されている。ERBB2はERBB2情報 伝達経路において、それ自体はリガンドに結合せず補助受容体として働く。

liwkowskiらは抗ERBB2単クローン抗体である2C4を開発した。2C4はERBB2とERBB3の ヘレグリン誘導性の結合を阻害する。また、2C4はERBB2経路の下流にある2つの重要 な標的、MAPキナーゼとAKTの活性化も阻害する。

ころで2C4は、腫瘍の増殖を実際に阻害できるのだろうか。2C4は培養細胞系と乳癌 異種移植モデルでは効果があった。重要なことに、2C4はERBB2を低レベルで 発現している異種移植腫瘍の増殖を防いだ。これはトラスツズマブではうまくいかな かったことである。

RBB2経路はまた、前立腺癌の増殖と存続、アンドロゲン依存性から非依存性の進行 に関与している。トラスツズマブと同じく2C4は、アンドロゲン依存性の前立腺癌異 種移植片の増殖は阻害できる。しかしトラスツズマブとは違い、2C4はアンドロゲン 非依存性の前立腺癌異種移植片にも効果がある。

たがって2C4抗体は、2種の異なる癌に対する治療薬として大いに見込みがある。そ のうちの1つ(アンドロゲン非依存性前立腺癌)は特に治療が困難な癌である。ヒト 型の抗体もすでに開発されており、同等の効果が見いだされた。臨床試験の結果が非 常に興味深く待たれる。

doi:10.1038/nrc892

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