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肺癌治療に有効なキナーゼ阻害剤

Nature Reviews Cancer

2002年6月1日

HTRF® KinEASE™ TK: a new solution for tyrosine kinase screening

グリベック(Gleevec)というキナーゼ阻害剤の昨年の臨床試験の成功の報告に続 き、フロリダ州オーランドで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2002年次総会の 出席者は、ZD1839という別種のチロシンキナーゼ阻害剤の驚くべき治療効果について 耳にした。ZD1839は、英国アストラゼネカ社によって「イレッサ(Iressa)」の商品 名で市販されている。ニューヨークのスローン・ケターリング記念癌センターの Mark Krisは、進行性非小細胞肺癌(NSCLC)患者でのZD1839の第II相臨床試験の結果 を提出し、「信じられないほどすばらしい」と断言した。

癌は、世界的に見ても死に至る癌の中で最も頻度が高く、その80%をNSCLCが占め る。NSCLCは、早期に見つかれば化学療法や放射線療法と結びつけた外科手術で治療 することができ、早期に診断された患者の5年生存率はおよそ50%である。しかし、早 期の発見はまれで、2000年には世界中で80万人を超える人がNSCLCで死亡した。

SCOで発表された臨床試験の結果には、従来の化学療法による治療を少なくとも2回 受けた後も腫瘍の増殖が続いたり、薬のもつ強い毒性のために化学療法を中止しなけ ればならなくなったりした216人のNSCLC患者が含まれていた。この臨床試験には2つ の評価点があった。1つは個々の個体における腫瘍の進行で、2つ目は個々の個体にお ける症状の改善である。

D1839を投与された患者の12%には部分的な臨床反応が見られ、腫瘍の大きさが半分 以下に縮小した。また、30%の患者では腫瘍が安定し、非進行性になった。さらに、 ZD1839を投与された患者の43%では、体重減少、呼吸困難、持続性のせき、疲労感な どの症状が改善されたことも報告された。ZD1839の毒性は軽く(発疹と下痢)、ひど い副作用を示した患者は7%だけだったと報告された。

れらの結果は、昨年後半の欧州と日本での第II相臨床試験からの中間報告で最初に 報告されたZD1839の治療効果を確認したことになる。そして、アストラゼネカ社の研 究者によれば、ZD1839の正式承認に向けた十分な基盤を提供したことになる。

D1839は、上皮増殖因子受容体のチロシンキナーゼ活性を選択的に妨げる。上皮増殖 因子受容体は数種類の癌に関与しているとされ、前立腺癌や胃癌の発生にも関係して いる。種々の腫瘍におけるZD1839の治療効果に関する予備的研究のほかに、頭部およ び頸部癌患者でのZD1839の第II相臨床試験からの結果も、治療に使える可能性がある ことを示している。

れらの結果の重要性を強調し、Krisは「誰もこの薬がこんなに効くとは思わなかっ た。これまでに肺癌の腫瘍がこんなに縮小したのを見た人は誰もいない。」と述べ た。

doi:10.1038/fake848

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