Research Highlights

治療を免疫であと押し

Nature Reviews Cancer

2003年11月1日

急性前骨髄球性白血病(APL)は通常、全トランス体レチノイン酸(ATRA)で治療するが、この薬剤はほんの短い期間しか効果がなく、さらに追加の戦略を必要とする。 Nature Medicine誌11月号で、Rose Ann Paduaらはワクチンについて述べており、このワクチンをAPLのマウスモデルにATRAと組み合わせて投与した場合、生存期間が延長されるという。

APL には、PML-RARα融合タンパク質の産生を引き起こす染色体転座が伴い、このタンパク質が骨髄細胞系譜の分化を混乱させる。この病気の遺伝子導入マウスモデルが開発され、これを使って新しい治療戦略を試験できるようになった。PML-RARαは通常は細胞で発現されないので、免疫療法のよい標的となる。

Padueらは、FrC遺伝子(免疫原性の高い破傷風毒素フラグメントCを指令する)にPML-RARαのDNAを融合させたワクチンをマウスに接種した。これらのマウスはPML-RARαに対して強い免疫応答を備えていることが、インターフェロンγ産生の 増加のほか、腫瘍性タンパク質に対する抗体産生とT細胞応答からわかる。ベクターにFrC遺伝子を付加すると、PML-RARαに対する免疫応答が著しく増幅する。 さらにベクターのみを接種したマウスと比較すると、PML-RARA-FrCワクチンの接種を受けた白血病マウスの56%が、生存期間が著しく延長された。

ところで、このワクチンはATRA治療と比較するとどうだろう。ワクチン治療を受けたマウスはATRA治療マウスとほぼ同程度の期間、生存した。しかし、2 つの治療薬を組み合わせた場合は、どちらか一方の治療を受けた場合と比較してマウスは40%以上長く生きた。Padueらは、DNAワクチン接種は、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強し、ヒトのATRA治療後の後遺障害をコントロールするうえで付加価値をもたらすと示唆して いる。

doi:10.1038/nrc1220

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