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自分の道を見つける

Nature Reviews Cancer

2004年2月1日

癌細胞をin vitroで殺滅することにおいては、どんなに特異的かつ効果的な薬物でも、それを実際の腫瘍に送達させるとなると、まったく別の問題になる。薬物は、血管系を通って血管壁を越え、それから腫瘍の細胞外マトリックス(ECM)を苦労して通り抜けなければならない。Rakesh Jainらは、新技術を改変・最適化して、拡散に対するこのような障壁の作用を評価できるようにした。

ニ光子蛍光相関顕微鏡(TPFCM)は、腫瘍における輸送パラメータをin vivoで測定できる三次元顕微鏡技術である。このTPFCMにより、腫瘍などの不均質サンプル内や細胞内であっても、蛍光標識した分子の濃度および拡散を測定することができる。蛍光標識した巨大分子およびリポソームの拡散係数をin vivoで測定し、両トレーサーが拡散の低速成分にも高速成分にもなることを突き止めた。腫瘍細胞間質は、粘性と水性の2相からなると考えられる。これは、この2つの相が腫瘍マトリックス内の分子輸送に影響を及ぼすことを直接的に示す初めての証拠である。

ECMのヒアルロン酸およびコラーゲン成分は、薬物送達の大きな障壁であると考えられており、こうした構造を分解する酵素で腫瘍を処理することを提案した研究者もいる。Jainらがヒアルロニダーゼおよびコラーゲナーゼで腫瘍を処理したところ、予想通り、コラーゲナーゼにより高速拡散成分の割合が増大することがわかった。ところが、ヒアルロニダーゼ処理すると、高速拡散分子の割合は低下した。Jainらは、ヒアルロン酸の構造はかご型でその間隙を水が満たしており、そこを通って分子が迅速に拡散するため、この構造を崩壊させると粘性の障害が増大するのではないかとしている。したがって、ヒアルロニダーゼは、薬物送達を促進するものではない。

Jainらは、このシステムを利用して薬物送達のほかの障壁をin vivoで調べたいとしている。

doi:10.1038/nrc1281

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