Research Highlights

逃れさせない

Nature Reviews Cancer

2004年5月1日

腫瘍発生の重要な側面に、癌細胞が宿主の免疫機構による検知および破壊から逃れる能力がある。Gabriel Rabinovichらは、マウスのメラノーマ細胞が、治療ターゲットとして有用なT細胞阻害因子ガレクチン-1(Gal1)を発現させる証拠を提示した。

調節機能をもつ糖結合タンパク質Gal1は、さまざまな種類の腫瘍で発現する。Gal1発現の増大は、腫瘍の悪性度および転移と相関関係にある。Rabinovich らは、(Gal1発現レベルが高い)B16マウスメラノーマ細胞にGal1アンチセンスcDNAを導入し、ノックダウンクローンを樹立することによって、その機能を検討した。このクローンによるGal1発現レベルは、低〜中程度であった。in vitroで野生型B16細胞の馴化培地にT細胞を適用すると、そのアポトーシスレベルは高かったが、Gal1ノックダウンクローンの馴化培地でのT細胞のアポトーシスレベルはごく低かった。

マウスでは、Gal1発現レベルが中程度のクローン由来の腫瘍増殖は、野生型メラノーマ細胞と比べてかなり遅かった。しかも、Gal1発現レベルが低い細胞は拒絶された。免疫不全マウスではどのクローンも同一速度で増殖するため、免疫系の構成要素が、こうした種々の反応を引き起こしているはずである。 Rabinovich らはさらに、Gal1遮断が誘発する腫瘍拒絶には、無傷のCD4+およびCD8+T細胞応答が必要であることを明らかにした。

Rabinovich らは過去の研究ですでに、Gal1がTヘルパー1 (TH1)免疫応答を特異的に抑制することを明らかにしていたため、Gal1ノックダウンメラノーマ細胞を注入したマウスに、この応答が認められるかどうかを調べようとした。このマウスから腫瘍所属リンパ節を除去し、その免疫細胞をex vivo刺激したところ、対照と比べ、TH1サイトカインであるインターロイキン2およびインターフェロンγの濃度が増大した。すなわち、メラノーマ細胞によるGal1産生を遮断すると、宿主の免疫系は TH1応答を開始させる能力を取り戻す。Gal1ノックダウンメラノーマはまた単核細胞による浸潤をも受けており、このマウスのT細胞にはアポトーシスが起こりにくかった。

このマウスは最終的にGal1ノックダウン細胞を拒絶した。しかも、野生型B16メラノーマ細胞で再誘発したところ、B16細胞で誘発したナイーブマウスと比べ、腫瘍増殖は遅延した。すなわち、Gal1発現を阻害すると、TH1腫瘍特異的免疫応答が増強するばかりでなく、Gal1発現腫瘍細胞によるその後の誘発に対する抵抗性が生じる。この研究はGal1と腫瘍進行との重要な結びつきを新たに示し、腫瘍の免疫特権に寄与する重要な機序を明らかにしている。

doi:10.1038/nrc1345

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